「近くの物が見づらい」という症状は、さまざまな原因で生じる可能性があります。例えば、軽度の遠視の方では、裸眼で遠くは見えるので「自分は目がいい」と思って遠視の矯正をしていないことがありますが、その状態ですと、いわゆる「老眼」ではなくても、近くの物が見づらかったり近くの物を見続けると疲れやすかったりすることがあります。また、眼鏡やコンタクトレンズで近視を矯正している方でも、それらを購入した時から目の度数が変化したりして、結果的に近視の矯正が強すぎる状態になっていると、同様の症状が現れることがあります。また、初期の緑内障の見えにくさを「老眼かなと思った」緑内障患者さんも多いようです1)。このように、「近くの物が見づらい」が、いわゆる「老眼」ではない場合もありますので、老眼かどうかを知るには眼科での検査が必要です。
【簡単】自分でできる老眼のセルフチェック方法!
作成日:2022/12/15 更新日:2024/11/13
「近くの物が見づらい」
簡単!自分でできる老眼チェック!
いわゆる「老眼」の場合、眼科では老眼の度数も調べてもらえます。しかし、「どのくらい近くが見えにくくなっているのか」は、セルフチェックすることも可能です。このチェックは本来、ご自身の近視や乱視といった屈折異常を完全に矯正した状態で行うべきなのですが、ご家庭では難しいので、日頃お使いのコンタクトレンズの装用時どのくらいの距離まで近くのものが見えるのか、チェックしてみましょう。
2. ご自身がいらっしゃる場所から1mほど離れたところに視標を固定します。
3. コンタクトレンズを装用した状態で、固定した視標に少しずつ近づきながら見え方の変化を確認します。
4. 「これ以上近づいたら見えない・ 見えづらい」と感じた時の、視標からご自身までの距離A(cm)を測ります。
→この距離が遠いほど(Aが大きいほど)、老眼の度数が強いということになります。
5. 「3-100/A」が、今お使いのコンタクトレンズを装用時に近く(30cm)の物が見えるようにする「老眼鏡」の度数の目安になります。「度数」は眼鏡でもコンタクトレンズでも、D(ジオプター)という単位で表記されています。
<例>
視標から50cmの距離で見えにくくなった
→3-100/50=3-2=1(D)が近くを見るのに必要な老眼鏡の度数の目安
なお、この計算をした結果、「マイナスの数字になった!」という方は、現在お使いのコンタクトレンズであれば約30cmの距離の物が見えている(老眼鏡は不要)ということを意味します。
6.ご家庭でできる簡易的なチェック法になりますので、実際の老眼鏡の度数は眼科で確認を受けるようにしましょう。
老眼鏡のしくみ
既製品の老眼鏡を見ると、+1.00Ⅾとか、+2.00Ⅾとかという度数が書かれています。Dは「ジオプター」という単位の略です。ここに+(プラス)とあるように、老眼鏡は「プラスレンズ」と呼ばれるレンズを用いています。プラスレンズは光を集めるレンズで、遠視を矯正するときにも使われます。同じ種類のレンズで矯正する「遠視」と「老眼」。共通点はあるのでしょうか?また、何が違うのでしょうか?
共通点
遠視も老眼も、「目の光を集める力が不十分であるために、網膜の後ろに焦点が来ている」ために見えづらい状態になっています。必要とされる分だけ目が光を集められないわけですから、遠視も老眼も、光を集めるプラスレンズを目の外に置いて矯正(焦点を網膜上にもって来る)することになります。
相違点
見づらさを感じる視標の距離が異なることです。遠視とは、近くだけではなく、遠くを見ているときにも焦点が網膜の後ろで形成されてしまい見づらいという状態です。老眼は、近くの視標を見ているときに、「光を集める力」が不十分であるために、焦点が網膜の後ろに行ってしまい、見づらいという状態です。遠視の方は、プラスレンズで遠くも近くも見えるようになりますが、(遠視ではない)老眼の方は、プラスレンズ(老眼鏡)をかけると、近くは見えても遠くは見づらいという状態になります。
さまざまな老眼矯正方法
老眼鏡は、いわゆる「目の良い方(遠くの見え方に不便のない方)」だけではなく、コンタクトレンズで遠くが見えるように矯正されている方にもお役立ちのアイテムです。
老眼の矯正方法には他にも、遠近両用コンタクトレンズや遠近両用眼鏡といったものがあります。老眼鏡含め、それぞれ一長一短がありますので、ご自身のライフスタイルに合わせた矯正ができると快適です。遠近両用眼鏡はレンズのかけ外しなしに遠くから近くまで見える眼鏡です。老眼鏡とは違って1枚のレンズに複数の度数が入っており、視線を移動させることで度数を使い分けるという使い方の眼鏡です。遠近両用コンタクトレンズも1枚のレンズに複数の度数が入っているレンズです。遠近両用眼鏡のように視線移動をしてレンズの中の度数を使い分ける製品もあれば、「同時視」と呼ばれる、全く異なる見え方で遠くから近くまで見えるようにする製品もあります。
それぞれの方の目の状態(度数や健康状態)によっては、「合わない」矯正方法もありますので、どの方法がご自身の生活に、そして、目の状態に合っているのかは、眼科で相談するようにしましょう。
老眼の矯正は調整が時々必要
老眼は60歳くらいまで徐々に進行していくため、数年経つと、「処方を受けたときには見えた」コンタクトレンズや眼鏡なのに近くが見えにくくなる、ということが起こりえます。見えにくいなと思いながら頑張ってしまうと、大きなストレスになりますので、早めに眼科で度数を調整してもらうようにしましょう。
まとめ
近くが見えにくい、という症状はいわゆる「老眼」だけで現れるものではありません。不適切な矯正や、未矯正の遠視、目の病気の場合もありますので、眼科で原因を確認してもらうようにしましょう。老眼の場合には、老眼鏡だけではなく、遠近両用眼鏡や遠近両用コンタクトレンズなどの選択肢もありますので、ご自身に合った方法で矯正して快適に生活できるようにしましょう。
<参考資料>
1) 東北大学病院iNDEX