3歳児健康診査(3歳児健診)の健診内容とは?何を診ているの?
作成日:2022/12/08 更新日:2024/05/16
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3歳児健診とは
3歳児健診とは、母子保健法に基づき実施される「乳幼児健康診査(1歳6ヵ月健診・3歳児健診)」の1つで、満3歳から満4歳になる前の子どもを対象として、各自治体(市区町村)での実施が義務づけられている健康診断です。2024年3月26日に公表された最新データによると、2022年度における3歳児健診の受診人数は875,482人、受診率は95.7%であり 1)、受診率100%を目指す取り組みが必要です。
3歳児健診の目的
個人差はあるものの、3歳になると子どもは自分の年齢や名前を言えるようになり、食事、トイレ、着替えなど、日常生活でも自分でできることが増えてきます。また、走る、絵を描くなどの運動機能も発達してきます。そのため、3歳児健診は、1歳6ヵ月健診の時には明確に見られなかった心や体の発達の遅れ、視覚や聴覚の異常などを見つけられる可能性が高くなります。このように、3歳児健診では、子どもの心身障害、疾病および異常を早期に発見し、適切な指導を行い、心身障害の進行を未然に防止するとともに、虫歯の予防、発育、栄養、生活習慣、その他育児に関する指導を行い、適切な治療の開始などにより、幼児の健康の保持および増進を図ることを目的としています 2)。
3歳児健診の対象
3歳児健診の対象は、基本的には満3歳から満4歳になる前の子どもですが、自治体によって細かな部分が異なります。例えば、健診時期が3歳5ヵ月から4歳を迎える誕生月中であったり 3)、3歳前日から4歳前々日の幼児を対象としている場合もあるため 4)、詳しくは各自治体のホームページでご確認ください。
3歳児健診の健診内容
厚生労働省令(母子保健法施行規則第二条)で示されている、3歳児健診の健康診査項目は下記の通りです 5)。1歳6ヵ月健診の健康診査と比較して、3歳児健診では⑤(眼の疾病及び異常の有無)と⑥(耳、鼻及び咽頭の疾病及び異常の有無)の項目が追加になっています。
具体的な検査内容は自治体によって多少異なりますが、概ね、身体計測、視覚検査、聴覚検査、歯科検診、尿検査、行動観察、診察・問診、保護者への質問などが行われます。
① 身体発育状況
② 栄養状態
③ 脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無
④ 皮膚の疾病の有無
⑤ 眼の疾病及び異常の有無
⑥ 耳、鼻及び咽頭の疾病及び異常の有無
⑦ 歯及び口腔の疾病及び異常の有無
⑧ 四肢運動障害の有無
⑨ 精神発達の状況
⑩ 言語障害の有無
⑪ 予防接種の実施状況
⑫ 育児上問題となる事項
⑬ その他の疾病及び異常の有無
視覚検査
1991年に、わが国では母子保健法のもと、世界に先駆けて3歳児健診に視覚検査が導入され、全国の自治体で一斉に視力検査が始まりました 6)。しかし、その後実施母体が都道府県から市区町村に移管されたため、各自治体の経済事情や医療環境により、実施項目、内容、健診に関わる費用の給付などに違いがみられます。特に、視覚検査の1つである屈折検査については、大きな地域差があることがわかっています 6)。
3歳児健診における視覚検査の目的と意義 7)〜9)
人の視覚刺激に対する感受性は生後すぐから1歳半頃をピークに上昇し、その後、8歳頃まで低下していきます。視機能の発達には、この視覚感受性期(生後すぐから8歳頃まで)に、適切な視覚刺激(両眼が同じ方向を向いていること、両眼が同等に明瞭に見えていること)を受けることが重要です。ところが、この感受性期に、目の病気・異常・けがなど、視機能の発達を妨げる何らかの異常が生じると、各々の目での視力の発達が損なわれたり、各々の目からの情報を脳でまとめる能力(両眼視機能)の発達が妨げられたりしてしまいます。そこで、自覚的な視力検査が可能になる3歳児において視覚検査を行い、屈折異常や斜視など視機能発達の阻害因子をもつ子どもや、眼疾患などを早期に発見し、治療することが重要となります。
3歳児健診における視覚検査の流れ 8)〜10)
3歳児健診の視覚検査(集団健診)は、一般的に、家庭での一次検査、健診会場での二次検査、そして要精密検査の子どもを対象とした眼科医療機関での精密検査の3段階で実施されます。
一次検査
アンケートによる問診と視力検査を各家庭で行います。視力検査は2.5mの距離をとり、視力0.5に相当するランドルト環(絵視標を使用する場合もあり)を用いて、左右眼の視力を保護者が検査します。
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二次検査
健診会場で家庭でのアンケート(問診票)と視力検査結果を回収して確認し、必要に応じた再検査や医師の診察を行います。家庭での視力検査ができなかった場合や、左右眼のいずれかで0.5の視力が確認できなかった場合には、視力の再検査を行います。また、問診票に1つでも該当項目があった場合や、視力の再検査で検査ができないか、左右眼のいずれかで0.5の視力が確認できない場合、または屈折検査や医師の診察(眼位検査、眼球運動検査など)で異常があった場合には、精密検査の受診を勧めます。
精密検査(眼科医療機関)
二次検査で要精密検査と判断された子どもと保護者は、別日に精密検査を受診できる眼科医療機関で精密検査を受けます。自治体は眼科医療機関から精密検査結果の報告を受け、受診状況と受診結果を確認します。
屈折検査
屈折検査により、遠視や乱視、近視などの異常の有無とその程度が把握でき、弱視の早期発見や治療の手がかりを得ることが可能になります。また、屈折検査は視力検査が理解できない3歳児にも使用できるため、この屈折検査の普及が望まれています。
斜視・弱視
人の視覚は限られた時期にしか発達しません。1歳6ヵ月頃から8歳頃までは物がちゃんと見えることがとても大切な時期です 7)~9)。そのため、斜視や弱視がある場合には、視覚の発達時期を逃さず治療することが重要です。
一般的に、子どもは、3歳を過ぎると、視力検査が理解できるようになります。3歳1ヵ月児のランドルト環を用いた視力検査の実施可能率は約78%で、3歳5〜6ヵ月になると検査可能率は約95%と報告されています 9)。斜視や弱視の検査を3歳児健診で行うのはこのためです。
斜視や弱視の可能性を指摘された場合
視覚の発達時期にある乳幼児では、常に物をはっきりと見ることが非常に重要です。斜視や屈折異常、先天性白内障などの疾患があると、正しい情報が脳へと伝達されず、視力が発達しないため、眼鏡やコンタクトレンズを装用してもよく見えない弱視(何らかの原因によって視力の発達が妨げられた「視力未発達」状態) 9)になってしまいます。しかし、弱視の要因を早期に発見し、早い段階で治療を開始できれば、視力の発達が期待できます。そのため、お子さんに弱視の可能性があるといわれたら、なるべく早く、眼科を受診するようにしましょう。
まとめ
3歳児健診では、1歳6ヵ月健診の時にはわからなかった色々な問題(斜視、弱視、難聴など)を発見できる可能性があります。特に目の異常に関しては、早期に治療を開始することが重要であるため、子どもの将来のためにも3歳児健診は必ず受けましょう。また、3歳児健診のときだけでなく、気になる症状がみられた場合には、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
<参考資料>
1) 厚生労働省:令和4年度地域保健・健康増進事業報告の概況 結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/c-hoken/22/dl/kekka1.pdf
2) 厚生労働省:「乳幼児に対する健康診査の実施について」の一部改正について
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc1688&dataType=1&pageNo=1
3) 兵庫県西宮市:3歳児健康診査
https://www.nishi.or.jp/kosodate/kosodate/kodomonokenko/kenkoshinsa/kenkoshinsa-a.html
4) 東京都足立区:3歳児健康診査
https://www.city.adachi.tokyo.jp/hoken/k-kyoiku/kosodate/k-3toshi.html
5) 母子保健法施行規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340M50000100055
6) 一般社団法人 日本眼科医療機器協会:3歳児健康検査における屈折検査の重要性
https://www.joia.or.jp/annual_report/annual-report-2022/p5/
7) 公益社団法人 日本視能訓練士協会:3歳児健康検査における視覚検査マニュアル(第2版)
https://www.jaco.or.jp/wp-content/themes/jaco_renew/assets/pdf/3kenmanual_2nd.pdf
8) 公益社団法人 日本眼科医会:3歳児健診における視覚検査マニュアル~屈折検査の導入に向けて~
https://www.jaco.or.jp/wp-content/uploads/2021/10/2021_sansaijimanual.pdf
9) 公益社団法人 日本眼科医会:市区町村及び都道府県担当者のための3歳児健康診査における視覚検査の円滑な実施と精度管理のための手引書
https://www.gankaikai.or.jp/school-health/detail2/__icsFiles/afieldfile/2023/05/30/sansaiji_tebiki.pdf
10) 日本弱視斜視学会:3歳児健診のご案内
https://www.jasa-web.jp/general/3sai-guide