赤ちゃんの視力はどのぐらい? 視力の発達や注意点を解説
作成日:2023/01/17 更新日:2024/11/13

赤ちゃんの視力の成長
生まれたばかりの赤ちゃんの目は大きさ(直径)も大人の2/3ほどしかなく、目の中の各パーツの構造も、物を見る、という機能(視機能)においても未完成の状態です。この状態から、目の構造も完成形に向かって成長していきます。さまざまな物を見る(視覚刺激)ことにより、赤ちゃんの視力も発達していきます。従って、この時期にいろんなものを見せてあげることは赤ちゃんの視力や視機能の発達において非常に重要なのです。
生まれた直後の赤ちゃんの視力
生まれたばかりの赤ちゃんの目は、構造的にも機能的にも未熟な状態です。そのため、出生直後の赤ちゃんは、明るさがぼんやり分かる程度しか見えていないとされています2)。赤ちゃんの顔の前で手を広げてゆっくり動かすと、明るさか変化することで何かが動いていることが分かる程度とされています1)。また、生まれたばかりの赤ちゃんの半数以上では、両目の向きがやや開き気味(開散:かいさん)であるとされています3)。生後2ヵ月頃になると正面を向いてきます。
生後3ヵ月頃の赤ちゃんの視力
生後3ヵ月頃になると、動く物を目で追うこと(追視)ができるようになります。人と目が合うようにもなり、この頃の赤ちゃんの視力は0.1程度とされています1)。
生後4ヵ月から1歳頃の赤ちゃんの視力
生後4ヵ月頃から両眼視といって、両方の目から入った情報を脳でまとめる能力が発達し始めます。その結果、物が立体的に見えたり、物をまとめて見たりすることができるようになってきます3)。赤ちゃんの視力はまだ発達途上であり、周囲の物がはっきりとは見えないものの、この頃から、自分の手をじっと見つめたり、近くにあるものに手を伸ばしたりするようになります3)。このような行動が見られるようになるのは両眼視が発達して、物の奥行きを捉えられるようになったり、目から入った情報と手の動きを協調させられるようになるためです。また、輻輳運動(ふくそううんどう:近くのものを見るときに目を内側に寄せること)も、4ヵ月頃までには調節(近くを見たときのピント合わせ)と連携するようになります3)。6ヵ月頃になると、赤ちゃんの視線はほぼ定まるようになってきます2)。
生後1歳になると、視力が0.2程度にまで上がってきます1)。視力の発達とともに、物をつかむことも次第に上手になります。
赤ちゃんの視力の発達を促すには
赤ちゃんの視力は、目から入った情報が脳へ伝わり、脳で正しく処理されることで発達していきます。そのため、たくさんの物を見るという刺激(視覚刺激)を与えることが、赤ちゃんの視力の発達を促す上で大切です。視覚情報と手の動きの連動を促すには、積み木やブロック、組み立て式おもちゃなどを使った遊びを取り入れてもよいでしょう。
赤ちゃんの視力が発達する過程での注意点
人間の視力や両眼視といった視機能は、出生から6~8歳までにしか発達しません。とりわけ3歳までが非常に重要とされています。その大切な時期に、何らかの原因で視覚刺激を十分に得られない状態が続くと、視機能の発達が制限されてしまいます。この時期に制限されてしまった視機能を大人になってから治す、ということはできないので、赤ちゃんから子どもになる時期に視機能の発達を促すべく多くの視覚刺激を得ることが重要です。ご家庭では、赤ちゃんと遊びながら、明暗に反応するか、追視ができているか、目が合うか、物をじっと見る(固視)ことがあるか、両目の向きがそろっているか、などを観察してあげましょう。生まれた瞬間から毎日、赤ちゃんの視機能は成長していますので、日々の観察がとても大切といえます。
赤ちゃんの目に違和感がある際は受診を
赤ちゃんは、見えなかったり見えにくかったりしても自分でそれを伝えることができないので、周囲の人が気づいてあげることが大切です。普段から赤ちゃんをよく観察して、次のような症状があったら、眼科医の診察を受けましょう。
- 目やにがたくさん出る
- しろ目が赤い
- 普通にしていても涙が多く出る
- 片目をつぶったり、まぶしがったりしている
- 目が内側に寄っている。目つきがおかしい
- 目がゆれる
- 片目を隠すと嫌がる
- 瞳が白く濁ってみえる、黄緑色に光って見える
- 動くものを目で追わない。
- 目を細めたり、極端に近づいたりして、物を見る
- 頭を傾けたり、横目で見たりする
- 視線が合わず、どこを見ているかわからない
- 目の大きさ、形が左右で違う
異常に気づいたら、迷わずに眼科医の診察を受けましょう。診察の際には、異常を示している写真や動画などがあると、診断の助けになるため、これらの持参をおすすめします。また、3歳児検診を必ず受けるようにしましょう。
まとめ
赤ちゃんの時期、特に出生から3歳までは、視機能が急速に発達する大切な時期です。この時期に得る視覚刺激が視機能の発達に重要です。この時期を逸してしまうと、大人になってから治すことはできませんので、周囲の人が日頃から赤ちゃんの様子を注意して観察してあげましょう。気になることがあったときには、迷わず眼科を受診するようにしましょう。
<参考資料>
1) 柏井 真理子:Eye Bank Journal 26(2):13-21, 2022
https://j-eyebank.or.jp/doc/class/class_26-2_01.pdf
2) 日本小児眼科学会:子どもの眼の発達と年齢ごとの異常所見について
http://www.japo-web.jp/info.php?page=9
3) 小口 芳久 編著:「小児眼科のABC」 第2版 日本医事新報社, 2003