視力の要件はさまざまな職業の試験に設けられています。その中には、多くの人が目指す身近な職業や人気の職業なども含まれています。代表的な職業をご紹介します。
警察官
警察官は、交通の取り締まりや事件・ 事故の捜査など、市民の生命や財産を守る責任を負っており、活動範囲が広く、目から正確な情報を得ることが大切です。警視庁の場合、警察官の採用試験の身体要件には視力の項目があり、両眼ともに、裸眼視力が0.6以上または矯正視力が1.0以上であることが求められます1)。
自衛官
自衛官は、防衛活動、緊急救助活動、国際平和協力活動など、国民と領土を守る幅広い任務を担っており、安全で的確な活動のためには一定の視力が欠かせない職業です。自衛官の採用試験の身体検査等の基準には視力の項目があり、両眼ともに、裸眼視力が0.6以上または矯正視力が0.8以上であるものと規定されています2)。また、色覚についても一定の基準があるようです2) 。
消防士
消防士は、火災現場の消火活動だけでなく、火事被害者の救助活動、救急活動、さらには防災のための指導なども行います。現場や点検の際に見落としがあると市民の生命や財産が危険にさらされるため、一定の視力が必要です。消防士の採用試験で求められる視力は、両眼で0.7以上かつ片眼でそれぞれ0.3以上です3)。裸眼に限らず、眼鏡やコンタクトレンズを使用している状態でこの基準に達していれば問題ありません3)。また、消防官として職務執行に重大な支障がない(赤色、青色および黄色の色彩の識別ができる)色覚も必要です3)。
海技士
海技士とは大型船舶の操縦に必要な国家資格のことで、20トン船舶で働くために必要な資格です。航海・ 機関・ 通信・ 電子通信の4種類があり、天候や潮流など自然現象を相手にする大型船舶を安全に航行するためには、一定の視力が重要です。海技士国家試験で求められる視力は、航海が両眼ともに0.5以上、機関は両眼で0.4以上、通信・ 電子通信は、両眼ともに0.4以上となっています4)。また、船舶職員としての職務に支障をきたす恐れのあるような、色覚の異常がないことも必要です4)。
パイロット
多くの旅客の命や貨物を預かって空を飛ぶパイロットには、航空業務を安全・ 適確に遂行することが求められます。そのためには心身が健康であることが重要であり、定期的に航空身体検査を受けることが航空法で義務付けられています。
視機能については、遠見視力、中距離視力(80cmの視距離)、近見視力(30cmから50cmまでの間の任意の視距離)、両眼視機能、視野、眼球運動、色覚に関する基準がそれぞれ定められています5),6)。このうち遠見視力については、両眼ともに裸眼で0.7以上および両眼で1.0以上、または常用眼鏡を使用した矯正視力で、同様の基準を満たすことが必要です5),6)。また、オルソケラトロジーによる矯正や、屈折矯正手術の既往歴についても一定の基準があります5),6)。
なお、これらの細かな基準については、航空会社によっても異なる場合がありますし、自社養成パイロットなのか、経験者なのかなどによっても異なる場合があります。
客室乗務員
客室乗務員はサービス要員としてだけでなく、保安要員としての役割があるため、緊急着陸や着水時など万が一の事態が発生したとき、乗客の誘導や安全の確保など、お客様の身を守る責任があります。その際、しっかりと視界を捉えるためにも一定の視力が求められます。そのため、国内のほとんどの航空会社では、裸眼またはコンタクトレンズによる矯正視力が両眼ともに1.0以上が条件になっています7)。また、一部の外資系航空会社を除き、乗務中は眼鏡を着用することができません7)。
海上保安官
海上保安官とは、日本の海域を巡視船や航空機を使って監視し、海上の安全および治安を守り、環境保全の活動をする職業です。主な任務としては、領海警備、海難救助、災害対応、海上犯罪取り締まり、船舶の航行安全などが挙げられます。そのため、裸眼もしくは矯正視力で、どちらか片眼でも0.6 に満たない場合には不合格になります8)。また、職務遂行に支障をきたす恐れのあるような、色覚の異常がないことも必要です8)。
電車運転手
電車運転手は、安全に目的地まで人を運ぶ仕事柄、身体検査の視機能の合格基準が定められています。矯正視力も含め、両眼で1.0以上かつ片眼でそれぞれ0.7以上の視力が必要です9)。正常な両眼視機能のほか、正常な視野と色覚も求められます9)。
騎手
騎手は馬に乗り、馬を操縦するため、一定の視力が必要です。従来は、裸眼で両眼ともに0.8以上の視力が必要でしたが、2022年4月に競馬学校(騎手過程)に入学した学生から、矯正視力も含め、両眼で0.8以上かつ両眼ともに0.5以上と、視力に関する基準が変更になりました10)。ただし眼鏡は不可で、ソフトコンタクトレンズのみ矯正に使用することが可能です10)。
競艇選手(ボートレーサー)
競艇選手とは、公営競技の競艇においてレースに出場し、賞金を獲得するプロフェッショナルスポーツ選手であり、国土交通省管轄の国家資格所持者です。両眼ともに裸眼で0.8以上の視力が求められ、コンタクト・ フェイキックIOL「有水晶体眼内レンズ」手術を受けた方は、応募対象外です11)。また、色覚についても一定の基準があるようです11)。
オートレーサー
オートレーサーは、最高速度150kmのスピードで競い合う公営競技のオートレースにおいて、レースに出場して賞金を獲得するプロスポーツ選手です。バイクに乗って順位を競う職業であり、常に危険と隣り合わせの命がけの仕事です。そのため両眼ともに、裸眼視力0.6以上または矯正視力1.0以上で、色覚が正常であることが必要です12)。