近視と遠視の違いとは?症状や見え方、レンズでの矯正方法について
作成日:2022/12/13 更新日:2024/11/13
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近視と遠視の仕組みの違い
「ものが見える」とは、目に入ってきた光をスクリーンの役割をする網膜に映し出し、そこに映った像が神経を伝わって脳に運ばれ、脳の中で処理することで得られる感覚のことです。見たいものに焦点(ピント)が合っていない状態だと、ぼやけた像が網膜に映し出され、その情報がそのまま脳へ送られるため「ぼやけて見える」といった症状が起こります。網膜上でぼやけた像にならないようにするには、角膜(黒目)や水晶体(目の中のレンズ)を光がきれいに通過し、なおかつ1点に集まらなければなりません。
この光が1点に集まったところを「焦点」といい、網膜上に焦点がある状態を「正視」といいます。一方、焦点の位置が網膜より手前にある状態を「近視」、網膜の後ろにある状態を「遠視」といいます。
近視は角膜や水晶体の屈折力(光を曲げる力)が強すぎるか、眼軸(目の奥行き)が長すぎることが原因で生じ、遠視は角膜や水晶体の屈折力が弱すぎるか、眼軸が短すぎることが原因で生じます。近視も遠視も網膜からずれた焦点を網膜上に移動させるために、眼鏡やコンタクトレンズなどで矯正を行います。
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近視と遠視の症状・見え方の違い
近視の症状・見え方
近視は、裸眼だと遠くが見えませんが、近くのものは見える目の状態です。ただし、近くが見えるといっても、その人の近視の程度によって見える距離は異なります。例えば裸眼でも、弱い近視であれば、1m以内のものはよく見えますが、強い近視であれば10cm以内のものしか見えない、という状態になります。いずれの場合も、近視の程度により決まる「ピントが合う(一番遠い)距離」よりも遠くのものはぼやけて見える、という症状がおこります。このように、近視の程度が強くなれば、ピントが合う距離がだんだんと目の近くになり、それよりも遠くのものが見えにくくなります。
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遠視の症状・見え方
遠視は網膜よりも後ろで焦点を結ぶため、近くのものも、遠くのものも見えづらくなります。遠視の目では、網膜の後ろに焦点がありますが、人はこの焦点を前方へ移動させることができます。この働きを「調節」と呼びますが、この調節により網膜の後ろに焦点がある遠視の状態から、網膜上に焦点を移動させることで遠くのものが見えるようになります。軽度の遠視の方は無意識に調節を行っています。近くを見るときは、さらに調節をしないと見えないため、遠視の方は正視(状態)の方よりも、多くの調節をして近くを見ていることになります。従って、遠くも近くも常に調節を働かせることになるため、目が疲れやすくなってしまいます。
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近視と遠視の矯正の仕組みの違い
近視や遠視は眼鏡やコンタクトレンズで矯正することが一般的です。
どちらの場合も焦点の位置を前か後ろにずらし、網膜上に焦点が来るよう、焦点の位置の調整を行うレンズを使います。このレンズを球面レンズ、といい、球面レンズは歪みのない球体をしているレンズで、全方向に均等に光を曲げる力を持っています。
近視の矯正
近視の矯正は、凹レンズ(マイナスレンズ)を使います。凹レンズは、光を広げる役割をするレンズです。近視は眼軸に対して相対的に目の屈折力が強いために焦点が網膜の手前にできてしまう状態ですので、目に入る前の光をある程度広げてあげることで、網膜上へと焦点を移動させることができます。
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遠視の矯正
遠視を矯正する場合は、凸レンズ(プラスレンズ)を使います。凸レンズは光を集める役割をするレンズです。遠視は眼軸に対して相対的に目の屈折力が弱いために焦点が網膜の後ろにできてしまう状態ですので、目に入る前の光をある程度集めてあげることで、網膜上へと焦点を移動させることができます。
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近視も遠視も網膜上に焦点を移動させることで、はっきりとものが見えるようになります。この状態になるために必要なレンズの種類と強さを調べる検査を、屈折検査といいます。眼鏡やコンタクトレンズの度数は、屈折検査の結果によって決定されます。網膜上に焦点が来る状態を作ったときにどのくらいの視力があるのかは、人によって異なります。
まとめ
近視は網膜より手前で焦点が結ばれるため、近くはよく見えるものの、遠くが見えづらくなります。一方、遠視は、網膜より後ろで焦点を結ぶため、調節しなければ近くも遠くも見えづらくなります。どちらも屈折異常の1つですが、見え方や矯正に用いるレンズは異なります。ぼやけているのに、自己判断で放置すると、眼精疲労をはじめとするさまざまな症状に発展する恐れがあります。眼科での検査、診断を受け、適切な矯正レンズを処方してもらうようにしましょう。
<参考資料>
・松本 富美子 他 編:「視能学エキスパート 光学・眼鏡」 第2版 医学書院, 2023