ここでは、「まぶたが腫れている」ことを「目が腫れている」と表現します。原因によって、片側の目(まぶた)だけが腫れることもあれば、両側とも腫れる場合もあり、さらに、かゆみや痛みを伴うこともあります。
目(まぶた)が腫れる原因にはさまざまなものがあります。アルコールを多くとったり、長時間泣いたりしてもまぶたが腫れぼったくなることもありますが、ここでは目が腫れる病気について代表的なものを紹介します。
作成日:2022/12/08 更新日:2024/11/13
ここでは、「まぶたが腫れている」ことを「目が腫れている」と表現します。原因によって、片側の目(まぶた)だけが腫れることもあれば、両側とも腫れる場合もあり、さらに、かゆみや痛みを伴うこともあります。
目(まぶた)が腫れる原因にはさまざまなものがあります。アルコールを多くとったり、長時間泣いたりしてもまぶたが腫れぼったくなることもありますが、ここでは目が腫れる病気について代表的なものを紹介します。
アレルギー性結膜炎とは、結膜がアレルギーによって炎症を起こす病気です。症状がひどくなると、まぶたも腫れることがあります。
最も多いのは、いわゆる花粉症(季節性アレルギー性結膜炎)です。その名の通り、アレルゲン(アレルギー反応を示す物質)である花粉の飛散時期に合わせてかゆくなり、飛散時期が過ぎると症状が治まります。一方、1年を通して結膜炎の症状が出る場合は、通年性アレルギー性結膜炎と呼ばれます。動物の毛やダニなど、年間を通して接触する物質が原因となっていることが考えられます。
また、春季カタルという、より重度の結膜炎が起きるアレルギー性疾患もあります。目の腫れのほか、かゆみや充血、目やに、なみだ目、まぶしさ、目のゴロゴロ感などの症状を伴い、ひどい場合には湿疹や喘息、角膜(くろ目)の障害が起きることもあります。アトピー性皮膚炎を伴うこともあり、20代に多い疾患です1)。
巨大乳頭結膜炎という病気では、上まぶたの裏側に炎症が起きて大きなブツブツ(乳頭)ができます。この病気の原因は、コンタクトレンズの付着物などに対するアレルギー反応と考えられています。
細菌やウイルスなどの微生物が原因となる結膜炎の総称です。さまざまな微生物が原因となりますが、人から人へうつっていきやすいものとして流行性角結膜炎があります。アデノウイルスというウイルスが原因の結膜炎で、このウイルスの感染力が強いためにその名の通り「流行」しやすく、一般に「はやり目」と呼ばれています。結膜炎の症状は一般的には強く、充血、大量の目やに・ 涙、目のゴロゴロ感とともにまぶたが腫れたりもします。また、耳の前側にあるリンパ節が腫れ、触ると痛みを感じることがあります。片目に発症した後、もう片方の目にも数日遅れで症状が出ることが多く、発症から1週間後くらいに症状のピークが来て、2週間前後で結膜炎は落ち着いてくることが多いとされています。この、発症から2週間の間は目やにや涙、あるいはそういったものを触った手やタオル、ティッシュペーパーなどを介して、周りの人にうつしてしまうことがあります。結膜だけではなく角膜にも炎症を起こし、淡い跡(角膜混濁)を角膜に生じます。まれにこの混濁により視力が障害されることがあります。
まぶたの炎症のことで、炎症を起こしている部位により、眼瞼縁炎(がんけんえんえん)と眼瞼皮膚炎に大別されます。
まぶたの縁の部分、特にまつ毛の生え際に炎症が起きた状態のことです。炎症が起きた部分が腫れたり赤くなったりするほか、かゆみや熱感を伴うこともあります。細菌感染が原因のこともありますし、眼表面の炎症に反応して赤くなる場合もあります。また、眼瞼縁炎の患者さんには、マイボーム腺という、まぶたの中にある分泌腺にトラブルを持つ方が一定数いることもわかっています2)。マイボーム腺の働きに異常がある場合、眼瞼縁炎だけではなく、目の乾きや不快感といった症状を伴うこともあります。
まぶたの皮膚が炎症を起こすもので、化学物質(目薬を含む薬品や化粧品)、ウイルス感染、アレルギー、アトピー性皮膚炎と、原因は多岐にわたります。
麦粒腫とは、いわゆる「ものもらい」のことです。地域によっては「めばちこ」「めいぼ」などと呼ばれることもあります。麦粒腫の原因は、まぶたにあるさまざまな分泌腺への細菌感染です。腫れるのはまぶたの一部ですが、ひどい場合にはまぶた全体が腫れることもあります。また、まぶたの縁が赤くなったり、ズキズキ、ゴロゴロといった痛みを感じたりすることもあります。
心臓・ 甲状腺・ 腎臓・ 肝臓などの内科的な病気で目(まぶた)が腫れることもあります。この場合は腫れている部分に赤みや痛みといった症状を伴うことは少ないようです。
目が腫れた原因により対処法も異なります。ここでご紹介した病気はごく一部のものです。大量に目やにが出る・ 見え方に異常がある・ 激しい痛みがあるなどの著しい異常がある場合には、ご自身で対処しようとするのではなく病院を受診してください。ここでは、「思い当たることがある場合」の対処法についてご紹介します。
アレルギー性結膜炎をお持ちの方は、まず予防を心がけましょう。ご自身のアレルゲンが何なのかを理解し、アレルゲンとの接触を最低限にするようにしましょう。眼鏡やマスクを使用して目や鼻へのアレルゲンの飛入を防いだり、アレルゲンが外にある場合には不必要な外出を控えたり、洗濯物を外に干さないのも有効です。いわゆる花粉症(花粉による季節性アレルギー性結膜炎)の場合には、花粉飛散量予測情報を活用したり、人工涙液などによる洗眼で、目に飛入した花粉を洗い流したりすることが有効とされています1)。また、花粉飛散開始予測日の約2週間前、まだ症状がないうちから、抗アレルギー点眼薬の使用を開始すると花粉飛散開始後の症状が軽くなることも示されています1)。ハウスダストやダニなど、一年を通じて身の回りにあるものがアレルゲンの場合には、お掃除を心がけたり、寝具のお手入れをしたりしましょう。コンタクトレンズをお使いの方は、今一度、日頃のコンタクトレンズの使用方法やケアの方法に問題がなかったか確認してみましょう。それでも症状が出てしまった場合には、市販薬にも抗アレルギー点眼薬がありますが、数日間使用しても症状が改善しない場合には眼科を受診するようにしましょう。
コンタクトレンズ装用が原因の場合は言うまでもありませんが、そうでない場合も目が腫れた場合には、レンズの装用は一旦中止するようにしましょう。
ご家族や周りの方に「はやり目」と診断された方がいて、自分にも似たような症状が出てしまった!という場合には、眼科を受診するのはもちろんのこと、これ以上感染を拡大しないように注意しましょう。目を触ったら、その手はすぐ洗う、目に使ったティッシュペーパーは直ちにゴミ箱に入れる、タオル類の共有は避ける、といった注意が必要です。
最近、化粧品を変えた・ 目薬を変えたなどが思い当たる方は、まずはこすったり触ったりしないで、原因と思われる化粧品や目薬の使用をやめて様子を見ましょう。それでも改善しない場合は他のことが原因だったり、追加の治療が必要だったりする場合もありますので、眼科を受診するようにしましょう。
目(まぶた)の腫れはさまざまなことが原因で起こります。目やまぶたの病気のだけではなく、内科的な病気も原因になり得ます。明らかに思い当たることがある場合には、ご自身でできる予防や対策を講じていただきつつ、それでも症状が現れてしまった場合や、症状の改善がない場合には眼科を受診するようにしましょう。
<参考資料>
1) 公益財団法人 日本眼科学会:アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)
https://www.nichigan.or.jp/member/journal/guideline/detail.html?itemid=429
2) マイボーム腺機能不全ワーキンググループ:あたらしい眼科 27(5):627-631, 2010