結膜下出血とは、結膜内の血管が破れ、結膜の下に出血が広がったもので、結膜の一部あるいは全体がべっとりと赤くなるのが特徴です。自覚症状がほとんどなく突然発症することが多いため、他人から目が赤いと指摘されて初めて気づく場合も少なくありません。見た目の派手さから、不安を覚えて医療機関を受診する人もいますが、通常は1~2週間程度で自然治癒します。
結膜下出血とは? しろ目(結膜)が赤くなる原因や対処法を解説
作成日:2022/12/15 更新日:2024/11/13
結膜下出血とは1)~4)
結膜下出血の原因1)~4)
結膜下出血の多くは、原因不明の特発性結膜下出血といわれています。他には、外傷(眼球打撲や骨折などによる直接の血管損傷)、結膜炎(アレルギー性、ウイルス性、細菌性)、眼球における血圧上昇、目の手術や注射、全身疾患なども原因となります。
最も頻度が高い特発性の結膜下出血は中高年に多く発症するとされ2)、例えば、結膜がたるむことによって生じる結膜弛緩症との関連が指摘されています3),4)。これは、まばたきをしたり目を動かしたりする際に、たるんだ結膜が目の表面でこすれ、その摩擦で血管が破れやすくなってしまうものです。結膜炎では、充血やかゆみを伴うため、目を強くこすることで二次的に結膜下出血を生じることになります。なお、コンタクトレンズ装用者は非装用者と比較して、結膜弛緩症の罹患率が高いことが知られています1)。
結膜下出血の症状1)~4)
結膜下出血では、結膜の部分に赤い斑点(出血斑)が生じます。これは、透明な粘膜下での出血で、血液が涙で流れていかないためであり、皮下にできた青あざと同じようなものとも言えます。出血斑は血液の広がる範囲によって、点状の小さなものから、結膜全体がべったりと赤くなる広範なものまで大小さまざまです。
ウイルスによる急性出血性結膜炎など、他に原因があるわけではなく、自然発症による単なる結膜下出血の場合には、通常、片眼性で、目が赤くなる以外の自覚症状はほとんどありません。あっても目がゴロゴロする違和感程度で、痛みやかゆみ、目やになどもなく、視力を含めた視機能への影響もありません。出血は、通常1~2週間程度で吸収され自然治癒します。
なかなか症状が治まらない場合や、何度も繰り返し出血する場合、外傷など明らかなきっかけがあった場合、痛みがある、視野が狭くなる、見えにくいなどの症状がある場合には、ほかの病気が疑われるため、早めに眼科を受診するようにしましょう。
結膜下出血と似て非なる充血1)~6)
結膜下出血は、結膜内の血管が破れ、結膜に出血が広がって赤く見えている状態です。ただし、透明な粘膜下での出血ですので、血液が流れ出るわけではなく、血管の走行ははっきり見えません。
一方、結膜下出血と似て非なるものとして充血があります。充血は、炎症などが原因で結膜周辺部分の血管が拡張し、血流増加によって目が赤くなった状態です。血管の走行が確認でき、血管拡張が起こる部位により、結膜充血、毛様充血などに分類されます6)。
これらの違いは、正確には眼科で検査をしないとわかりませんので、結膜下出血かな?と思っても、他に原因がある可能性もありますので、眼科で診断を受けるようにしましょう。
出血 | 充血 | |
---|---|---|
分類 結膜下出血 結膜内の血管が破れる | 分類 結膜充血 結膜浅層の血管が拡張する | 分類 毛様充血 結膜深層の血管が拡張する |
所見 ・ 結膜に点状あるいは斑状の出血 ・ 斑状では結膜の一部あるいは全体が赤くなる ・ 痛みやかゆみなどはない ・ 目やには出ない | 所見 ・ まぶたの裏側や結膜周辺部分に充血 ・ 角膜から離れるほど充血が強い ・ 目やに、涙を伴う | 所見 ・ 角膜周辺に青紫色を帯びた充血 ・ 角膜に近いほど充血が強い ・ まぶたの裏側は充血なし ・ 涙は出るが目やには出ない |
結膜下出血の対処法1)~4)
結膜下出血の多くは、痛み・ 目やに・ 視力障害などを伴わない特発性で、軽度であれば、通常1~2週間程度で出血は自然に吸収されて元に戻ります。出血量が多ければ、もう少し長引く場合がありますが、徐々に赤みが引いていくため、通常、治療の必要はありません。ただし、外傷や結膜炎、全身疾患などに伴う場合は、そちらの治療が必要になります。
また、結膜下出血の予防はできませんが、何度も繰り返し出血するような場合は、別の病気が潜んでいる可能性があるので、念のため眼科を受診し、検査した方が良いでしょう。なお、コンタクトレンズを使用している人は、眼科を受診するまでは、ひとまず装用を中止しましょう。結膜下出血かな?と思っても、そうではない可能性もあるからです。目が赤いときのコンタクトレンズの装用可否については、最終的には眼科医の指導に従うようにしましょう。
まとめ
結膜下出血では、結膜が赤くなり、見た目に派手な変化があらわれるため、不安になって眼科を受診する人も多いのですが、明らかな原因がない場合、治療の必要はなく、通常は無治療で経過を観察します。ただし、目の赤みがなかなか治らないときや、何度も繰り返し出血する場合には、別の疾患が原因となっている可能性があるため、眼科医に相談するようにしましょう。
<参考文献>
1) 大路 正人 他 編:「今日の眼疾患治療指針」 第4版 医学書院, 2013
2) 中澤 満 他:「標準眼科学」 第14版 医学書院, 2018
3) 三島 一晃:透析ケア 19(10):923-925, 2013
4) 稲田 紀子:週刊 日本医事新報 5040:36, 2020
5) 公益財団法人 日本眼科学会:目の病気 症状から調べる
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/
6) 医療情報科学研究所 編:「病気がみえる vol.12 眼科」 第1版 メディックメディア, 2019