目を使い続けた後、夕方になってくると目がかすみ、物が見えづらくなるといった症状が出ることがあります。「仕事を終えてパソコンから目を離したら、遠くがかすんで見えない」、「夕方になると目がかすむ・ しょぼしょぼする」など、このような症状は「夕方老眼」と呼ばれています。
老眼は、目のピント調節力(ピントを近くに引き寄せる力)が低下した状態です。目の老化が原因なので、その状態がずっと続きます。一方、夕方老眼は、夕方にみられる視力低下や目の不調で、目を使い続けた後などに、一時的に老眼のような状態になることです。近年、20代や30代などの若い人でも、夕方老眼の症状を訴える人が増えているようです。
なお、人の眼はもともと暗い所では見えにくくなりますが、それと夕方老眼とは別の物です。
夜や夕方に目がかすむ・ しょぼしょぼするのはなぜ?疲れ目の原因や対処法を解説
作成日:2024/11/13 更新日:2024/11/13
夕方老眼とは
夜や夕方になると目がかすむ・ しょぼしょぼする理由
目がピントを近くに引き寄せると近くが見えるようになりますが、その際、目の中の筋肉は緊張しています。この緊張状態が続くと目が疲れてしまい、ピントを合わせ続けることがしにくくなります。夜や夕方など、目を使い続けた後に現れる目のかすみなどの症状は、この目の疲れの蓄積によっても引き起こされていると考えられます。また、日中、目を酷使して乾燥した状態が続くことも理由の1つかもしれません。つまり、目の疲れを蓄積しないようにしたり、目の乾燥対策をしたりすることで、夕方になって目がかすむ、夜になると物が見えにくいといった症状が出にくくなるかもしれません。
疲れ目とは
目がかすむ、目がしょぼしょぼする、目が痛いなど、目の疲れを自覚する人が最近増えています。近年、多くの人々において、パソコンやスマートフォンなどの情報機器を使用する機会が増加し、近距離を見続ける環境が増えたこともあり、疲れ目や眼精疲労は、生活に密接した目のトラブルになってきました。たかが疲れ目、と軽く見られがちですが、生活や仕事に支障を来たすため、注意が必要です。
疲れ目を引き起こす目のピント調節の仕組み 1)~4)
近視や乱視、遠視といった屈折異常のない(または矯正されている)人の目は、ピント調節が働くと近くにピントがきて近くが見え、ピント調節が休止すると遠くにピントが行き遠くが見えるようになります。近くを見るときには毛様体筋という筋肉が緊張・ 収縮、チン小帯が緩、レンズを厚くしてピントを近くに寄せています。例えば、パソコンやスマートフォンの画面を見ているときは、近くを見続けるので、この毛様体筋は常に収縮して緊張した状態になっています。このような緊張状態が続くと、疲労が蓄積してピント調節機能が低下することがあります。そうすると、ピントが合いにくい状況で物を見続けるので、ますます負担がかかってしまいます。
夜や夕方など、目を使い続けた後に現れる夕方老眼の症状は、日中ずっと厚みのある状態が続いていた水晶体が、夕方急には薄くなれず、遠くを見たときにピントがぼやけてしまうなど、目の疲れの蓄積によって引き起こされていると考えられます 1)。
疲れ目の主な原因 4)~6)
目の疲れの原因はさまざまですが、主な原因としては次のようなものがあります。
長時間にわたるパソコン・ タブレットの使用
デスクワークが多い人、スマートフォンやタブレットをよく使用する人は、疲れ目を引き起こしやすい傾向にあります。パソコンなどの情報機器の画面を見る際には、まばたきの回数が減り、次第に目が乾きやすくなり、疲れ目につながります。また、パソコン上の細かい文字を見続けると、目のピントを合わせるために毛様体筋の緊張状態が続くため、疲れやすくなります。
ドライアイ(目の乾き)
加齢によって涙の量が減ったり質が不安定になったりすると、目の表面が傷つきやすくなるなど、さまざまな症状の原因となります。また、空気が乾燥しやすい冬の時期は、エアコンや暖房の使用により、肌だけでなく目の水分も奪われやすくなります。エアコンの風が直接目に当たると、目が乾きやすくなり、疲れ目の原因になります。
不適切な度数の眼鏡・ コンタクトレンズの使用
眼科の検診を長期間受けていないと、視力が変わっている場合があります。不適切な度数の眼鏡やコンタクトレンズをそのまま使用し続けると、ピントを合わせるために毛様体筋が常に緊張した状態になり、疲れ目が起きてしまいます。
その他考えられる要因6)
他に、ストレス、睡眠不足、調節緊張・ 老視(老眼)、白内障、緑内障などが、目の疲れを引き起こしている可能性があります。何らかの病気が隠れていることもあるので、症状が気になる場合は、眼科を受診しましょう。
疲れ目の症状 6)
疲れ目は、目がかすむ、目がしょぼしょぼする、目がぼやける、目が痛い、充血などの症状として出てきますが、症状が進むと、目だけでなく、肩こり、首こりなど全身の不調も現れるようになります。疲れ目を抱えながら過ごすのもつらいですので、以下のような対処法を試してみてはいかがでしょう。
疲れ目の対処法
疲れ目の原因にはさまざまなものがあります。上に挙げたようなピント合わせや、目の乾燥感といったものから、初期の緑内障や老視、ドライアイといった、治療や矯正が必要なものまで数多く存在します。治療や矯正が必要な状態がないかどうか眼科で確認を受けることは欠かせません。その上で、ここでは日常生活の中で気をつけられること、対処できそうなことをご紹介したいと思います。
こまめな休憩をとり、乾燥予防対策を行う
パソコンを使って仕事をしたり、スマートフォンを操作したりするときは、連続して1時間作業したら10~15分の休憩を取り、遠くの景色を眺めるなどして目を休めてください 7)。パソコンを使って作業をする場合には、ディスプレイと目の間の距離(視距離)を40cm以上あけ、画面の上端の位置を目の高さと同じかやや下にしましょう 7)。また、意識的にまばたきをする、加湿器を使うなど、目が乾燥しないように注意しましょう。ストレスも疲れ目の原因となるので、体を動かすなどリラックスする時間も設けるようにしましょう 4)。
眼鏡やコンタクトレンズの度数を調整する
度数の合っていない眼鏡やコンタクトレンズを使っていると、目が一生懸命ピントを合わせようとするため、目が疲れやすくなります。本人が気づかないうちに視力が変わっている場合もあるので、きちんと定期検査を受け、常に度数の合った眼鏡やコンタクトレンズを使用するようにしましょう。
目薬を使用する
市販の目薬にはさまざまな成分が配合されているので、目の疲れや目のかすみに効果のある目薬を使用するか、医師や薬局で薬剤師に相談し、あなたの症状に合った目薬を勧めてもらいましょう。目の乾燥を和らげる目薬の使用も有効です。目薬をさしたらまぶたを閉じて光を遮断し、目を休ませてください。コンタクトレンズを装用したまま点眼したい場合には、コンタクトレンズ装用時にも使用できる、防腐剤が配合されていない目薬にしましょう。
市販の目薬は非常に種類が多いので、コンタクトレンズ装用時に使用できる目薬については、ハード、ソフトの種類を含め、パッケージに記載があります。それを参考にするのもいいでしょう。
ツボマッサージを行う 8)
東洋医学では、「睛明(せいめい)」というツボの刺激が、かすみ目や疲れ目に有効とされています。「睛明」は、目頭近くにあるツボです。目を閉じ、親指の腹をツボに当て、左右同時に3~5回押してみましょう。目のまわりの皮膚は薄いので、目を傷つけたり、皮膚をこすったりしないようにして、心地良いと感じる程度の圧で押すようにしてください。
目の周辺をマッサージする 8)
目の周りをマッサージすると、むくみや疲れの解消につながるだけでなく、表情もすっきりとした印象になります。
目を温める 6)
目を温めるのもおすすめの方法です。目の周りの血流が改善されると必要な栄養素や酸素が浸透し疲れが軽減されます。水で濡らしたハンドタオルなどを硬く絞り、500Wの電子レンジで30秒~1分ほど加熱して温めて使用してください。携帯用にはホットアイマスクなども販売されています。
まとめ
夕方や夜になると目がかすんだり、しょぼしょぼしたりするのは、目の疲れの蓄積も一因かもしれません。なるべく目に負担のかかるようなことは避け、症状が続いたりひどくなったりした場合は、眼科を受診し、早めに相談して対処するようにしましょう。
*「夕方老眼」は、医学用語ではなく造語です。
<参考文献>
1) Web èclat 2022年1月10日掲載:梶田 雅義 先生 取材記事
https://eclat.hpplus.jp/article/80500
2) NIKKEI STYLE 2015年7月15日掲載:坪田 一男 先生 取材記事
https://www.nikkei.com/nstyle-article/DGXMZO88987960X00C15A7000000/
3) 中澤 満 編:「標準眼科学」 第14版 医学書院, 2018
4) 医療情報科学研究所 編:「病気がみえる vol.12 眼科」 第1版 メディックメディア, 2019
5) 公益社団法人 東京都医師会:産業医の手引き 第4章-1 情報機器作業(旧:VDT作業)
https://www.tokyo.med.or.jp/sangyoi/guidance/4s-1
6) 大路 正人 編:「今日の眼疾患治療指針」 第4版 医学書院, 2022
7) 令和3年12月1日 基発1201第7号:「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて」の一部改正について
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc6314&dataType=1&pageNo=1
8) 加藤 雅俊:「ホントによく効く リンパとツボの本」 増補改訂版 日本文芸社, 2023