目のトラブル

網膜剥離とは?網膜剥離の原因・症状・治療について解説

網膜剥離は、目の奥にある「網膜(もうまく)」という場所に生じる病気です。20代と50代に発症のピークがあり、失明などの重篤な状態に発展する場合もありますので、早期発見・早期治療が重要です。ここでは、網膜剥離が起きてしまう原因や、検査法、治療法などを解説します。

作成日:2024/11/13 更新日:2024/11/13

網膜剥離が起きた男性
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網膜とその働き

網膜とその働き

目の奥には、「網膜」という神経の膜が存在しています。網膜の外側には脈絡膜(みゃくらくまく)、さらにその外側には強膜(きょうまく)があります。網膜はさらに、大きく分けると2つの層で構成されています。光や色を感知してその情報を脳へと伝える「神経網膜」と、その下にある「網膜色素上皮」です。

「ものが見える」という感覚(視覚)は、目から入ってきた光を脳で認識してはじめて生まれます。このプロセスにおいて、目は光を①通す②集める③光を神経が理解できる信号に切り替える、という役割を担っています。網膜は①と③の役割を果たしており、このうち③光を神経が理解できる信号に切り替える、という役割においては神経網膜にある「視細胞」という細胞が欠かせないものになります。視細胞は、網膜色素上皮とその外側にある脈絡膜から栄養や酸素をもらっていますので、視細胞が存在する神経網膜と網膜色素上皮、脈絡膜が正しい場所に存在していることは視細胞が機能するために不可欠です。

視力低下の​原因・対策は?

網膜剥離とは?

網膜剥離とは?

網膜剥離とは、何らかの原因で、神経網膜が網膜色素上皮から剥がれてしまった状態のことをいいます。網膜色素上皮から神経網膜が剥がれてしまうと、栄養や酸素の供給が途絶え、視細胞の機能は低下してしまいます。すると、剥がれてしまった網膜からは脳が理解できる信号が減る(または来なくなる)ため、視界の中でその部分は見えないという状態に陥ります(視野の異常)。

皮膚が剥がれたら痛いのですが、網膜剥離自体には痛みは伴いません。網膜には痛みを感じる神経が存在しないので、網膜が剥がれても痛みを感じないのです。

網膜剥離の種類

網膜剥離の種類

裂孔原性網膜剥離

網膜剥離の中で最も多く見られるタイプです。第一段階として、神経網膜に裂け目や穴(裂孔・円孔)ができます。外傷や加齢が原因になります。この穴から、目の中にある「液化硝子体(えきかしょうしたい;後述)」という水分がその穴を通って神経網膜と網膜色素上皮の間に入り込むと神経網膜が網膜色素上皮からはがれてしまい、網膜剥離が発生します。本来、目の中は硝子体(しょうしたい)という、透明なゲル状のものが詰まっているのですが、年齢とともに、あるいは近視の強い方は比較的若いころから、「液化硝子体」という水分が同居するようになるのです。

その他の網膜剥離

牽引性網膜剥離:網膜の表面に付着した硝子体などが網膜をひっぱる(牽引する)ことで網膜が剥離してしまうものです。重症の糖尿病網膜症などでみられます。

滲出性網膜剥離:網膜内あるいは脈絡膜の血管などから、何らかの原因で血漿などの液体成分が血管から漏れ出てきたために網膜が剥離してしまうものです。

裂孔原性網膜剥離の原因

裂孔原性網膜剥離の原因

なぜ、網膜に裂け目や穴(裂孔・円孔)ができるのか?

若年者(主に20歳前後)の網膜剥離の主な原因は近視や外傷です。強い近視のある方は、眼球が大きいために、周辺部の網膜が引き延ばされて、薄く破れやすい状態(菲薄化)になってしまう傾向にあります。この部分が実際に破れて裂孔が生じると、網膜が剥離してしまいます。また、外傷に伴って眼球に強い力がかかると、眼球が変形するとともに網膜に裂孔が生じ、網膜剥離が起きることがあります。

一方、中高年者(主に50歳以降)における網膜剥離の主な原因は、硝子体の変化です。本来網膜と接していた硝子体が収縮して小さくなり、だんだんと網膜から離れてきます。この現象を「後部硝子体剥離」といいます。硝子体が小さくなった部分は液化硝子体が満たすので硝子体が小さくなっても眼球が小さくなることはなく、後部硝子体剥離自体は視機能に影響を及ぼすものではないのですが、硝子体と網膜の間に強く癒着している(くっついている)部分があると、後部硝子体剥離に伴ってその部分の網膜が硝子体に引っぱられ、裂け目や穴(網膜裂孔・円孔)ができてしまうことがあるのです。

網膜剥離の症状

網膜剥離の症状

網膜剥離の代表的な症状は、以下のとおりです。ただし、網膜裂孔の位置や大きさ、数、進行の程度、出血の有無などによって現れる症状が異なり、場合によっては無症状のこともあります。また、以下の症状は網膜剥離に特異的(網膜剥離においてのみ認められる症状)ではありません。なお、先にお話ししたように網膜剥離そのものでは痛みという症状はありません。

飛蚊症(ひぶんしょう)

白い壁や青い空、水面などを見たときに、視野のなかに浮遊物(糸くずやごま粒のようなもの、あるいはリング状のもの)が見え、眼球を動かすとその浮遊物が、ゆらゆらと動きます。その動くさまが、蚊が飛ぶようであることからこのように呼ばれます。

光視症(こうししょう)

視野に一瞬あるいは数秒間、稲妻のような光が見える症状です。網膜は硝子体に引っぱられると、誤って「光が来た」という信号を脳に送ってしまいます。その結果、視野のなかに光が走ります。このときに「見える」光は、いわば目の中で作られていますので、光のない真っ暗な所にいてもこの症状がでることがあります。

視野や視力の異常

網膜に穴や裂孔が生じる際に網膜の血管が切れて目の中に出血することがあります。硝子体内に出血が広がると、視野全体が暗くなる、飛蚊症が増える、ススがかかったように見える、などの症状が現れます。

また、剥離した部分の網膜はだんだんその機能が落ちますので、視野の中で該当する部分は見えにくい状態になっていきます。例えば、眼球上方の網膜が剥離すると視野の下側が、眼球下方の網膜が剥離すると視野の上側が見えづらくなります。また、黄斑部(視野の中心に対応する部分)の網膜が剥離すると、ものがゆがんで見える、視力が低下する、といった症状が現れます。網膜が剥がれている部分が広がると、視野の中で見えにくい部分は広がっていきます。さらに、網膜裂孔の位置や大きさ、年齢によっても、視野の異常・視力低下の程度や進行速度が異なります。

網膜剥離の検査方法

網膜剥離の検査方法

目の奥にある網膜の観察(眼底検査)は「瞳孔(どうこう)」から目の中を覗く、という方法をとります。

検査用点眼薬で開いたままになった瞳孔から目の中を観察する

瞳孔は光を入れると小さく縮んでしまい、観察が十分にできないため、光を入れても瞳孔が縮まないよう、瞳孔が大きく開いたままになる点眼薬(散瞳薬)を使用して眼底検査を行います。硝子体出血がありこの方法では網膜を観察できない場合には、超音波検査など他の検査も行います。散瞳薬は点眼してから瞳孔が開いたままになるまで20~30分かかります。検査自体は数分で終了しますが、瞳孔が元の状態に戻るまでの5~6時間は、まぶしく見えにくい状態になります。そのため、眼底検査後に車両の運転はできません。

網膜剥離の治療方法

網膜剥離の治療方法

網膜剥離と一口にいっても、裂孔の位置や大きさ、剥離している網膜の広さ、場所などによってさまざまな状態があります。個々の患者さんの状態に応じて医師が治療方法を選択します。

網膜光凝固術

裂孔の周りの網膜にレーザーを照射し、熱によって凝固させることで神経網膜と網膜色素上皮の癒着を作ります。いわば、「堤防」をつくるような処置であり、ここに堤防をつくることで、目の中のお水が裂孔から侵入しても、堤防を越えて神経網膜と網膜色素上皮を乖離させないようにするのです。ただし、裂孔の大きさや、硝子体が網膜を引っ張る力の強さによっては光凝固術を行っても網膜剥離への進行を防ぎきれない場合もあり得ます。

手術

大きく2通りの手術があります。裂孔の大きさや位置、網膜剥離の進行程度、硝子体出血の有無、他の眼科疾患の有無などにより医師が術式を選択します。

強膜内陥術

眼球の外側から帯のようなもの(強膜バックル)を縫い付けて眼球を内側に向けて凹ませることで、網膜色素上皮と剥離した神経網膜の距離を縮めるとともに、硝子体が網膜を引っぱる力を弱くするための手術です。神経網膜と網膜色素上皮の間の液体が多い場合には眼球の外側から排出します。また、裂孔の周りは、熱凝固や冷凍凝固で神経網膜と網膜色素上皮を癒着させ「堤防」を作ります。

硝子体手術

目の中に小さな器具を入れて、網膜を引っ張っている硝子体を切除したり、裂孔の周りを熱凝固したり、剥離した網膜を戻したりする手術です。

いずれの手術の場合も、裂孔を閉じるために目の中に気体を入れることがあります。この気体は数日で自然に吸収されますが、その間、うつ伏せ姿勢など、目の中の気体が裂孔に当たるような姿勢(頭位)を維持する必要があります。

手術の場合はもちろん光凝固術の場合も、術後の経過観察は重要です。また、もう片方の目に網膜剥離が起きやすい方もいらっしゃいます。医師の指示に従って、経過観察もしっかり受けるようにしましょう。

まとめ

まとめ

網膜剥離が進行すると、すべての網膜が剥がれてその機能を失い、やがて光を感じることもできなくなってしまいます。飛蚊症や光視症、視野の異常などの症状が現れた場合には直ちに眼科を受診するようにしましょう。

参照サイト

・公益財団法人 日本眼科学会

https://www.nichigan.or.jp/

・公益社団法人 日本眼科医会

https://www.gankaikai.or.jp/

・日本網膜硝子体学会 「網膜剥離について」

https://www.jrvs.jp/guideline/jrvs_retinal_detachment140530.pdf

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