目のトラブル

緑膿菌による角膜感染症の原因や症状は?角膜(黒目)の傷から感染するとどうなる?

緑膿菌による角膜感染症(緑膿菌角膜感染症)は、コンタクトレンズ装用に伴う目のトラブルの中で、深刻なものの1つです。コンタクトレンズは正しく使用していれば、快適で便利なものですが、間違った使い方をすると、感染症を引き起こす可能性が高くなります。中でも、緑膿菌による角膜感染症は重症化しやすいので注意が必要です。この記事では、緑膿菌とはどのような菌で、どのような経路で感染し、どのような症状が現れるのかなどについてご紹介します。

作成日:2023/01/17 更新日:2024/05/16

緑膿菌に​よる​角膜感染症​の女性
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緑膿菌とは

緑膿菌とは1)~3)

緑膿菌の特徴

緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa:シュードモナス エルジノーサ1))は、土壌、淡水、海水中など自然界に広く存在する好気性(酸素の存在下で生育する)のグラム陰性桿菌(棒状または円筒状の形をしている菌)で、私たちの生活環境に広く分布している菌の1つです。特に、洗面所やトイレといった水回りの湿った環境に多く生息しており、増えると独特の臭気を放ちます。緑膿菌は、感染者の膿が緑色を帯びていたことからその名がつけられました。

緑膿菌 イメージ図

緑膿菌の病原性

病原性が弱い病原体が、病気の治療などで免疫力や体力が低下している人(易感染性宿主)に感染したり、感染症を引き起こしたりすることを「日和見(ひよりみ)感染症」といいますが、緑膿菌は日和見感染症の代表的な原因菌であることが知られています。病原性が弱いので、健康な人であれば基本的に緑膿菌に感染することはありませんが、病気の治療などで免疫力や体力が低下している人には、感染してしまうことがあります。

緑膿菌の目への感染についても、通常は心配ありませんが、角膜に傷がついていたり、免疫力が低下したりしている状態では、感染してしまうことがあります。コンタクトレンズ装用に伴う角膜感染症の中でも、緑膿菌による角膜感染症は、恐ろしいものの1つです。

緑膿菌は角膜以外にも、免疫力が低下した人や高齢者の、全身のさまざまな臓器に感染し、呼吸器感染症、尿路感染症、皮膚感染症、敗血症などを引き起こすことが知られています。

緑膿菌の薬剤耐性

緑膿菌はさまざまな抗菌薬に対して耐性(自然耐性)をもちますが、その中で本来有効とされてきたカルバペネム系薬、アミノグリコシド系薬、ニューキノロン系の3剤1)全てに耐性を獲得したものを、多剤耐性緑膿菌(MDRP:multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa)といいます。多剤耐性緑膿菌の病原性は、通常の緑膿菌と変わりませんが、有効な抗菌薬がほぼないことが大きな問題になっています。

多剤耐性緑膿菌による感染症は、「薬剤耐性緑膿菌感染症」として、感染症法上では5類感染症・定点把握疾患に指定されています1),3)。なお、現在、そのような株の分離率は、国内では1〜数%程度と推定されています3)

緑膿菌角膜感染症の原因と感染経路

緑膿菌角膜感染症の原因と感染経路

緑膿菌に感染してしまう原因

緑膿菌による角膜感染症は、コンタクトレンズの使用法やケアが不適切な人に多くみられます。例えば、1dayタイプ(1日使い捨て)のソフトコンタクトレンズを数日〜数週間にわたって使用している人や、レンズケース内のケア剤(消毒剤、保存液など)を都度交換しない人に、緑膿菌の感染が多いことが報告されています4)。また、感染症にかかった人のレンズケースから保存ケース内液を取り出して培養してみると、非常に高い頻度で緑膿菌などの菌が検出されたことから、レンズケースの汚染が感染原因の1つではないかと考えられています4),5)

緑膿菌の感染経路5)~7)

汚染されたコンタクトレンズを装用することで感染してしまう場合が多いとされています。特に、コンタクトレンズのレンズケースを洗面所などの水回りに放置すると、緑膿菌がケース内に混入しやすくなるため、コンタクトレンズとともに緑膿菌を目に入れてしまう可能性が高まります。汚染されたコンタクトレンズを装用した際、角膜の表面に傷などがあると、そこから緑膿菌が入り込み、角膜感染症を引き起こしてしまうのです。

緑膿菌が目に引き起こす病気

緑膿菌が目に引き起こす病気3),7)

緑膿菌が引き起こす問題の大部分は「日和見(ひよりみ)感染症」です。目の場合、涙液に異常がある人や、角膜に傷などがある人では、緑膿菌感染が起こる可能性が高くなります。

中でも、緑膿菌による角膜感染症の多くは、汚染されたコンタクトレンズ装用が原因であるといわれています。コンタクトレンズを装用することで目が乾きやすくなる人がいることに加え、レンズの装用で、角膜表面が傷ついてしまうという背景もあります。コンタクトレンズの扱い方には注意し、しっかりと感染対策をしましょう。

緑膿菌による角膜感染症の症状

緑膿菌による角膜感染症の症状8)

緑膿菌はコンタクトレンズ装用者に発症する細菌性角膜炎の重要な原因菌です。緑膿菌に感染して炎症を起こすと、初期の段階では、目が痛む、充血するなどの症状がみられます。すぐに眼科に行けないなどで進行してしまうと、角膜の深い層にまで炎症が及び、角膜潰瘍(角膜が溶けてしまうこと)に至ります。緑膿菌による角膜感染症であるという診断がつき、治療が成功しても、角膜に白い濁りを残すことがあり、この濁りが中央にある場合には、視力障害が残ってしまう場合もあります。
緑膿菌にによる角膜感染症の予防方法

緑膿菌にによる角膜感染症の予防方法7),9)

コンタクトレンズの適正使用

緑膿菌による角膜感染症の多くは、汚染されたコンタクトレンズ装用が原因です。コンタクトレンズを適正に使用して細菌を目の中に持ち込まないようにしましょう。具体的には、コンタクトレンズを取り扱う前に、手指を石けんで十分洗う、レンズの使用期間を守る、目に傷などがあるときは装用を中止する、コンタクトレンズを装用したまま就寝しない、2weekタイプ(2週間頻回交換)の場合は、指定された方法でコンタクトレンズのこすり洗いやすすぎ等を必ず行い、正しくコンタクトレンズを使用することが大切です。レンズケースも清潔に保ちましょう。レンズケース内の液は毎回捨てて、レンズケースはケア剤で洗い、自然乾燥させます。また、新しいパッケージを開封したら、そのたびに新しいレンズケースに交換するなど、定期的なレンズケースの交換も忘れず行いましょう。

最初にご紹介したように、緑膿菌は水回り等に生息しています。コンタクトレンズを装用したままの入浴、シャワー、水泳も、緑膿菌を持ち込むリスクがあるので控えましょう。

また、定期的に眼科で検査を受け、早い段階で目の傷などがないかどうか、確認することも重要です。

消毒効果の高いケア剤の使用

ソフトコンタクトレンズ用消毒剤としては、主に、MPS(マルチパーパス ソリューション)、過酸化水素製剤、ポビドンヨード製剤の3種類に分けられます。中でもMPSは、ソフトコンタクトレンズの洗浄、すすぎ、消毒、保存の4ステップを1剤で行うことができる便利なケア剤です。しかしMPSは便利である反面、消毒効果が過酸化水素製剤やポビドンヨード製剤より劣っている点が短所でした。

こうした中、近年、MPSよりも消毒効果が高く、多くの細菌、真菌に対して過酸化水素製剤と同等の消毒効果を発揮するソフトコンタクトレンズ用消毒剤である、MPDS(マルチパーパス ディスインフェクティング ソリューション)が発売されています。MPDSは、使い方はMPSと同じですが、優れた消毒効果を発揮するだけでなく、タンパク質や脂質の汚れもしっかりと落としてくれます。

アキュビュー® ブランドからは、アキュビュー® リバイタレンズ® というMPDSが発売されています。ソフトコンタクトレンズとの相性が良く、ソフトコンタクトレンズユーザーにおすすめの消毒剤です。

ソフトコンタクトレンズ用消毒剤の種類や正しい使い方

緑膿菌感染症の治療方法

緑膿菌感染症の治療方法10),11)

目が緑膿菌に感染した場合、一般的に、抗生物質の目薬を用いて治療を行います。緑膿菌は、多くの抗生物質に対して耐性をもっていますが、一部の抗生物質は有効であるため、医師は感染の程度や患者の症状に応じて、適切な抗生物質を処方します。局所での濃度を上げるため、30分~1時間ごとに点眼が行われる場合もあります。また、重症の場合には、抗菌薬の点滴や内服薬による治療が行われることもあります。薬物治療で治らない場合や、角膜に残った強い濁りのために視力が障害されている場合には、角膜移植が行なわれることもあります。

緑膿菌は、本来、病原性は弱いのですが、発症すると急速に進行するため、対応が遅れると失明してしまうこともあります。異常を感じたら、早めに眼科を受診するようにしましょう。

まとめ

まとめ

緑膿菌角膜感染症は、角膜の表面だけではなく、より深い層にまで症状が進行する可能性があります。また、その場合には視力障害が残ってしまうこともあります。予防するためにも、眼科医の指示のもと、コンタクトレンズを正しく取り扱いましょう。

<参考資料>

1) 医療情報科学研究所 編:「病気がみえる vol.6 免疫・膠原病・感染症」 第2版 メディックメディア, 2018

2) 日本眼感染症学会:緑膿菌~角膜炎(輪状潰瘍)

https://www.jaoi.jp/study07/

3) NID国立感染症研究所:薬剤耐性緑膿菌感染症とは / 多剤耐性緑膿菌感染症とは

https://www.niid.go.jp/niid/ja/

4) 松原 倫子 他:日本職業・災害医学会会誌 60(3):182-187, 2012

5) 江口 洋:あたらしい眼科 26(9):1187-1192, 2009

6) 前田 直之 他 編:「新篇眼科プラクティス 9 必読! コンタクトレンズ診療」 第1版 文光堂, 2023

7) 医療情報科学研究所 編:「病気がみえる vol.12 眼科」 第1版 メディックメディア, 2019

8) 稲田 紀子:週刊日本医事新報 No.5040:37, 2020

9) 一般社団法人 日本コンタクトレンズ協会:コンタクトレンズの使用方法について

https://www.jcla.gr.jp/contactlens/howtouse.html

10) 日本眼感染症学会感染性角膜炎診療ガイドライン第3版作成委員会:日眼会誌 127(10):859-895, 2023

11) 公益社団法人 日本眼科医会:目についての健康情報

https://www.gankaikai.or.jp/health/index.html

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