角膜は一般的には「黒目」と呼ばれており、目の一番前面(表面)にあります。「黒目」という名前とは裏腹に、実は角膜は黒くなく、透明な膜です。角膜が透明でないと目の中に光が入っていけないからです。角膜は、目の中に光を通すのと同時に、光の進行方向を変え、光を集める働きも担っています。
角膜に傷がついたらどうなる?原因と対策をご紹介
作成日:2024/11/13 更新日:2024/11/13
角膜とは?
角膜の構造
角膜は、厚さ約0.5〜1mmの薄い膜です。中央が最も薄く、周辺[白目(結膜)側]に行くほど厚くなります。角膜の最表層にある細胞は角膜上皮細胞(かくまくじょうひさいぼう)と呼ばれ、細胞が定期的に入れ替わっています。角膜上皮細胞は細菌などの微生物が角膜の中に侵入するのを防いだり、涙を保持したりしています。窓ガラスについた水滴はすぐに落ちていってしまいますが、目の表面で涙が落ちていかない理由の1つは、角膜上皮細胞が涙を捕まえているからなのです。角膜の一番内側(奥)にある角膜内皮細胞(かくまくないひさいぼう)は、角膜の水分量を一定にすることで角膜の透明性を維持している重要な細胞です。この細胞は角膜上皮細胞と違い、増えたり、入れ替わったりする能力がありません。生まれた時に与えられたものを一生大切に使っていくことになります。角膜は透明である必要があるので、角膜には血管がありません。そのため角膜にある細胞は血液中の赤血球からではなく、角膜が接している大気中から受け取って呼吸しています。
角膜に傷がつく原因
コンタクトレンズの不適切な使用
その製品の性能を超えて長時間コンタクトレンズを装用したり、装用したまま寝てしまったりすると角膜が酸素不足に陥り、傷になったり感染症にかかりやすくなったりしてしまいます。
コンタクトレンズの異常
使用期限の過ぎたレンズや、変形・ 破損したレンズの装用も、角膜に傷がつく原因となります。ソフトコンタクトレンズは乾燥によって変形したり、破損したりしますので、レンズケースに保存するときは、保存液にしっかりと浸すことが大事です。また、レンズケースの縁でレンズを挟まないように気をつけましょう。
コンタクトレンズ装用中の乾燥
コンタクトレンズ装用に伴う乾燥によっても、角膜に傷がつくことがあります。
ドライアイ
ドライアイは、涙の量が減ったり、質(安定性)が悪くなったりすることによって、涙が角膜全体に均等に行きわたらなくなる病気です。涙には角膜を守る働きがあるため、涙が均等に行きわたらないと角膜に傷がつくことがあります。
外傷
目を強くこすったり、どこかに強くぶつけたり、あるいはとがった物で目を突いてしまったりすると、角膜に傷がつくことがあります。ほかにも、風が強い日に飛んできた砂、料理中にはねた油、掃除に使用した洗剤などが目に入り、角膜を傷つけてしまう場合もあります。
体に潜んでいるウイルス
体の中にもともと存在しているウイルスが、角膜を傷つけてしまう場合もあります。このようなウイルスの代表例がヘルペスウイルスです。ヘルペスウイルスは、一度感染すると神経の中に潜伏します。普段は潜伏したまま悪さをしませんが、体の抵抗力が落ちたときに再び増殖して、角膜に炎症を起こし、特徴的な形の傷を角膜につくり、目の異物感や痛み、視力低下などの症状を招きます
角膜に傷がついたら痛い?
角膜に傷があったら、さぞかし痛いだろうと思いますよね? もちろん、外傷などは痛みを伴うことが多いでしょう。ところが、あまり痛みを感じない場合もあるのです。もちろん、ゴロゴロする、などの自覚症状を伴う場合もありますが、小さな傷の場合、自覚症状が全くないことも多いのです。また、ソフトコンタクトレンズを装用していると、レンズが絆創膏のような働きをしてしまい、痛みを感じにくくなることもあります。このように、目が痛くなくても傷がついていることがありますので、コンタクトレンズをお使いの方は定期的に眼科で検査を受けるようにしましょう。
角膜の傷は「感染性角膜炎」を引き起こす場合も
細菌などの微生物が目に持ち込まれた際、角膜に傷があるとそこから微生物が侵入して、感染性角膜炎と呼ばれる角膜の炎症を起こす可能性があります。コンタクトレンズを装用している場合は、レンズを介して目の中に微生物が入ることもあるため、日々のケアがとても重要性になります。
感染性角膜炎になると、目の痛み・ 目やに・ 充血・ 光がまぶしいなどの症状が現れます。また、炎症が続いたり広がったりすると、近視などを矯正してもよく見えないという状態になってしまうこともあります。炎症を起こした場所によっては治癒後もよく見えない状態が続いてしまう場合もあるため、早期の治療が大切です。
角膜に傷がある場合の注意点
コンタクトレンズの装用は控える
角膜に傷があるときにコンタクトレンズを使うと、治りが遅くなったり、傷から微生物が侵入して感染性角膜炎になったりすることがあります。傷が治るまでコンタクトレンズは使用しないようにしましょう。
目薬を正しく使う
目薬はさす回数が決められていますので、その回数をしっかりと守りましょう。市販の目薬を使いたい場合は、薬剤師に相談しましょう。
角膜を傷つけないために
角膜を傷つけないように、次のようなことに注意しましょう。
自分に合ったコンタクトレンズを適切に使用する
コンタクトレンズは自分に合ったものを眼科で選んでもらうようにしましょう。また、製品の性能や目の状態により、寝るときは外す・ 定められた装用時間や交換頻度を守るなど、医師の指導に従ってレンズを使用しましょう。尚、再装用可能な製品の場合には、正しいケアも大切です。こすり洗いをしていなかったり、保存液を継ぎ足したり、レンズを水道水の中で保存したり、開封して時間がたったケア剤を使ったりしていませんか?自分に合ったコンタクトレンズでも適切にケアをしなければ、角膜の傷などの目のトラブルにつながることがあります。適切なケアを心がけましょう。
コンタクトレンズをよく確認
コンタクトレンズをつける前に、レンズや包装容器に異常がないか、よく確認するようにしましょう。レンズや包装容器に異常がある場合にはそのレンズは装用しないようにしましょう。
目の乾燥をケアする
目がよく乾く、ヒリヒリする、という方は、まずは眼科を受診しましょう。普段は目の乾きは気にならないという方も、集中して何かをじっと見るような作業(車両の運転、スマートフォンの操作、パソコン作業など)のときには、目が乾きやすくなります。意識的にまばたきをしたり、目薬を使ったりしてケアしましょう。
まとめ
角膜に傷があるからといって、症状があるとは限りません。コンタクトレンズを装用している場合は、定期検査が重要な理由もよくわかりますね。ましてや、自覚症状がある場合には、早めに眼科を受診するようにしましょう。