目やには、目の分泌物・ 目の表面の細胞・ 細菌やウイルスといった微生物・ ハウスダストや花粉といった異物が混ざったものです。目の表面にある細胞は皮膚の細胞のように常に入れ替わっていますし、目の表面は常に外界にさらされているので、微生物やら異物やら、さまざまなものが入ってくるのです。目はそれらを異物として認識し、排除しようとします。その反応によっても目やにが作られます。目やにや異物などを物理的に排除しているのが涙です。まばたきがポンプのように働いて、涙が目やにや異物を洗い流してくれるのです。ところが、夜寝ているときはまばたきをしないので、この涙の洗浄効果が弱まり、目やにがたまりやすくなってしまいます。朝、目やにがつきやすいのはそういった理由があるのです。目やにが出た際は、清潔な指で丁寧に取り除くか、洗顔して目やにを綺麗に洗い流すようにしましょう。
目やにの原因は?大量に出る・ 止まらない・ ネバネバなどの症状で考えられる病気とは
作成日: 2024/11/13 更新日: 2024/11/13
目やにとは?
目やにが出る病気
結膜炎
目の表面に微生物や異物が入ってくると、目はそれらを排除しようとします。その反応は「炎症」と呼ばれる状態を引き起こします。原因は何であれ、「炎症」が起きているときには、涙や目やにの量が増えることがあります。結膜(しろ目)に炎症が生じる病気を結膜炎といい、原因によって、アレルギー性結膜炎、細菌性結膜炎、ウイルス性結膜炎などに分類されます。
代表的なアレルギー性結膜炎はいわゆる「花粉症」です。これは花粉を原因とするアレルギー性結膜炎ですが、花粉に限らずハウスダストなど、その人が反応する異物が目に入るとアレルギー性結膜炎は起こります。この、アレルギー性結膜炎のときや、ウイルスが原因となるウイルス性結膜炎のときには、白色または半透明の、糸をひくような目やにが出るとされています1)。ウイルス性結膜炎の中には、「はやり目」といわれる、感染力が非常に強いウイルス(アデノウイルス)が原因となるものもあります(流行性角結膜炎)。風邪のような症状に続いて大量の目やに、充血、異物感などを生じます。「はやり目」という名にたがわず、涙や目やにを触った手や、涙や目やにをふいたタオルやティッシュペーパーなどを介して周りの人に移してしまいます。目や、目やにを触ったら、どこも触らず手を洗う、タオルは共有しないなど、周りの人にうつさないように注意する必要があります2)。
細菌が原因となる細菌性結膜炎のときは、原因となる細菌によって症状はさまざまですが、黄白色でネバネバした目やにが出るとされています2)。
結膜炎はコンタクトレンズの不適切なケアや、不適切な使用によって生じることもあります。そのときにも目やにが出ます。目やにのほかに、充血や異物感、レンズがずれやすい、レンズが汚れやすいなどの症状も生じます。また、きちんとケアをして、きちんと定められた使い方をしていても、レンズとの物理的な相性に問題があると、やはり結膜炎になってしまうことがあります3)。レンズを触る前には流水と石けんで手指を洗う、コンタクトレンズのこすり洗いをする、レンズケースを清潔に管理し定期的に交換する、定められた使い方(交換期間や寝る前に外すなど)を守るなど、コンタクトレンズは正しく使用・ 管理するようにしましょう。それでも目やにが増えたりレンズが汚れたりずれたりするときは、まずはコンタクトレンズの装用を控え、早めに眼科を受診するようにしましょう。
ドライアイ
ドライアイとは、涙の安定性や量の異常に伴い、さまざまな症状が出る病気です。見え方が一時的にぼやけたり、ゴロゴロしたり、しみるような感覚が生じたり、充血したりします。朝起きた時にゴロゴロしたり、目が開けにくかったりする症状がある方もいらっしゃるようです4)。ドライアイも目やにを生じる病気の1つです。ドライアイでは、白っぽい目やにが出るとされています4)。
涙道のトラブル
涙道(るいどう)とは、先ほどご説明した涙の排出路全体のことです。鼻涙管(びるいかん)は、涙の排水管ですが、この鼻涙管が狭くなったり閉塞してしまったりすることがあります(鼻涙管閉塞)。涙の排水管が詰まってしまうわけですから、涙が目から外へ流れてしまったり(流涙:りゅうるい)、涙と一緒に流れるはずだった目やにが出たりしてしまいます。原因は不明であることがほとんどですが、外傷・ 炎症・ 微生物の感染・ 異物やできもの(腫瘍)などが原因の場合もあります5)。根本的な治療は手術になります。
実は赤ちゃんでも鼻涙管が閉塞した状態で生まれてくる場合があります(先天性鼻涙管閉塞)。鼻涙管を開通させる手術もありますが、自然に開通することも少なくなく、治療の時期についてはさまざまな考え方があるようです2)。
鼻涙管閉塞を背景に涙嚢(るいのう)に炎症が生じることがあります(慢性涙嚢炎)。鼻涙管が閉塞して涙嚢に涙がたまると微生物が繁殖しやすくなってしまうのです。慢性涙嚢炎では、目やにや流涙といった症状が続きます。また、涙嚢の部分が赤くなったり腫れたり痛みが生じたりすることもあります6)。
まつ毛のトラブル
目やには、まつ毛にトラブルがあっても生じやすくなります。
例えば、まぶたの外側に向かって生えるはずのまつ毛が、内側に向かって生えてしまっている状態、いわゆる「逆さまつ毛」(睫毛乱生:しょうもうらんせい)が挙げられます。まつ毛が目の表面をつつくため、異物感・ 目やにといった症状が出やすくなります。また、まつ毛は正しい方向に生えていても、まぶたが内側(目のほう)に向いてしまっている場合(眼瞼内反:がいけんないはん)には、やはりまつ毛が目の表面をつついてしまいます。
程度が強い場合には目の表面が傷になってしまったり、充血したりする場合もあります。このトラブルも、根本的な治療としては手術になりますが、目の状態により医師が判断します。
眼科を受診するタイミング
朝起きた時に、目の周りに少し目やにがついている程度であれば、特別な異常がなくても出ることもあります。しかし、目やにの量が異常に多い、日中も目やにが出る、目やにがネバネバしている、緑色や黄色をしているなど、目やにに異常が認められる場合や、見え方がぼやける、痛みやかゆみがある、充血しているなど、目やに以外にも症状がある場合には、速やかに眼科を受診しましょう。
市販の目薬は使ってもよい?
目やにの原因によっては市販の目薬で症状が改善する場合もあります。しかし、目やににはさまざまな原因があります。そして、目やにの原因が異なれば治療薬や治療法も異なりますので、眼科を受診し、目やにの原因を特定してもらうのは大切なことです。早めに眼科を受診するようにしましょう。
まとめ
目やには、目の表面や涙の通り道に異常があると増えやすくなります。また、コンタクトレンズ装用に関連していることもあります。目やにの量や見た目がいつもと違う、他の症状もある、などの場合には早めに眼科を受診しましょう。
<参考資料>
1) アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/ACD3rd_chap2-2.pdf
2) 公益財団法人 日本眼科学会:目の病気
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/
3) Skotnitsky CC, et al.:Optom Vis Sci 83(1):27-36, 2006
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16432470/
4) ドライアイ研究会
5) 宮崎 千歌:第23回日本眼科記者懇談会 「病気かもしれない?なみだ目のおはなし」 涙道疾患の診断と治療
6) 社会福祉法人 恩賜財団 済生会