ドライアイとは?症状や原因は?セルフチェック法や対処法もご紹介
作成日:2023/01/18 更新日:2024/11/13
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ドライアイとは?
ドライアイは、目を守るのに欠かせない涙の量が不足したり、涙が目の表面にとどまりにくくなったりして目の表面が乾きやすくなる病気であり、目の表面に傷を伴うことがあります1)。いわば、ドライアイは涙の病気ともいえます1)。
日本では、2,200万人もの患者さんがいるとされ、その数はさらに増加しつつあるといわれています1),2)。
ドライアイの定義
ドライアイという用語が実際に使われるようになったのは、1990年頃からとされていますが、1995年には世界に先駆けてドライアイの定義と診断基準が日本で作成されました3)。その定義と診断基準は何度か改訂され、現在のドライアイ診療ガイドライン(2019)では、ドライアイは「様々な要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがあるもの」と定義されています3)。
ドライアイの分類3),4)
ドライアイは、涙の分泌量そのものが低下(量的な異常)する「涙液減少型」と、涙が分泌されているにもかかわらず、涙の性質や涙を保持する能力が変化(質的な異常)し、涙が目の表面にとどまることができず、すぐに乾いてしまう「蒸発亢進型」の2つに大きく分けられます。
なお、質的な異常の一部に、「BUT(涙液層破壊時間)短縮型ドライアイ」と呼ばれる種類のドライアイがあります。これは、涙は分泌されているのに目の表面で涙が安定せず、目を開けてから5秒以内に涙が乾いてしまうタイプです。
近年、このタイプのドライアイが増加しています。
ドライアイの症状とは?
ドライアイの症状は、目が乾く、目がゴロゴロする、物がかすんで見えるといった症状のほか、目が疲れやすい、まぶしい、目が痛い、目が赤い、目やにが出るなどさまざまです1)~4)。
目が乾く
通常は、涙が絶えず分泌されることで、目の潤いが保たれていますが、涙の量が減ったり、涙の安定性が損なわれたりすると、目が乾きやすくなります。涙自体には問題がない人でも、パソコン作業やゲームなどに長時間集中すると、その間まばたきの数が減り、目の乾きを感じることがあります。また、コンタクトレンズを装用していると、レンズの表面も裸眼と同じように涙の層で覆われますが、レンズ表面を覆う涙の層は裸眼の場合と比べて薄く、涙が蒸発しやすい不安定な状態になってしまいます。そのため、コンタクトレンズ装用時には、目の乾燥感を覚えることがあります。
目がゴロゴロする
涙は、まばたきをスムーズにする働きもしていますので、涙が目の表面をきれいに覆うことができない状態になると、まばたきをする際に目とまぶたの間に摩擦が生じやすくなり、ゴロゴロとした異物感を感じることがあります。
物がかすんで見える
まだらに濡れた硝子越しに外が見えにくいのと同じで、涙が不安定な状態では、物がぼやけて見えることがあります。
ドライアイのセルフチェック
それでは、あなたの目がドライアイになっていないかどうか、チェックしてみましょう。
ドライアイのセルフチェック方法として、チェックシートを用いる方法や、10秒チェックというものがあります。次のセルフチェックで、自分がドライアイの可能性があるかどうか確認してみましょう。
ドライアイチェックシート
以下のような症状が、ドライアイの症状です。当てはまるものがあれば、チェックを入れてみてください。チェックが入った項目が多いほど、ドライアイの可能性が高いといえます。ただし、このチェックシートは簡易的なもので、正確な診断を行うものではありません。1つであっても、症状が続くような場合には、眼科へご相談ください。
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ドライアイ10秒チェック
10秒間まばたきせずに目を開けていられない場合には、ドライアイの可能性が高いといわれています。
ご自身でチェックしてみましょう!
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ドライアイ(症状)の原因は?
では、なぜドライアイは起こるのでしょう。ドライアイの原因は、目自体の機能低下による目の病気としてのドライアイと、ライフスタイル(長時間画面を見る)や生活環境といった環境的因子によるドライアイ症状の2つに大きく分けられます。以下に、主な原因をご紹介します。
目の機能低下によるもの(病気としてのドライアイ)
加齢に伴う涙の量や質の低下1)~5)
ドライアイになる原因の1つが加齢です。涙腺の分泌機能は加齢とともに低下していくため、分泌される涙の量が減ったり、安定性が悪くなったりすることで、目の表面全体に行きわたらなくなり、乾きやすくなります。
マイボーム腺の機能不全
マイボーム腺とはまぶたの中にあり、涙の油分を分泌している器官です。マイボーム腺から分泌された油は涙の表面に「油膜コート」のようなものをつくって涙を蒸発から守ったり、目を開ける時に涙が目の表面に広がるのを助けたりしています。このマイボーム腺がアイメイクや目元の汚れ、細菌感染などによって詰まったり、機能が低下したり、加齢に伴ってマイボーム腺自体が失われたりすると、涙の中の油分が減り、目が乾きやすくなり、ドライアイが起こりやすくなります1)~6)。最近の研究で、ドライアイには、水が足りないタイプと油が足りないタイプがあり、マイボーム腺の機能低下は、油が足りないタイプのドライアイを引き起こし、ドライアイの原因全体の86%以上を占めていることが報告されています6),7)。
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環境的因子によるもの(ドライアイ症状)
パソコンやスマートフォンの使いすぎ8),9)
急速なIT化により、仕事や学校、日常の生活の中で、パソコンやスマートフォンなどの情報機器(Visual Display Terminal:VDT)を利用する作業が増えてきました。これらの画面を見ているときは、まばたきが不完全になったり、まばたきの回数が減ったりするため、目の表面全体に涙が行きわたらず乾燥しやすくなり、ドライアイのような症状を引き起こします。作業時間が長いほど、より乾きを感じやすくなるでしょう。
コンタクトレンズの装用1)~4)
ソフトコンタクトレンズを装用すると、レンズによって涙の層が内側と外側に分断され、レンズの表面にある涙の層は、薄く、不均一で不安定になりやすく、ドライアイのような症状を引き起こします。このため、コンタクトレンズ装用中は目が乾燥しやすいと感じることがあります。ハードコンタクトレンズの場合には、レンズの下(角膜側)に目の表面の涙液が吸い込まれてしまい、コンタクトレンズに覆われていない部分が乾きやすくなります。
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エアコンの使用などによる空気の乾燥1)~4)
エアコン、暖房などで空気が乾燥した部屋に長時間いると、涙が蒸発しやすくなり、ドライアイのような症状が出やすくなります。特に、エアコンの風が直接あたるような場所にいると、乾燥しやすいので注意が必要です。
このほかにも、ストレス、薬の服用、過労、喫煙、全身疾患、不規則な生活、運動不足といったメタボリックシンドロームになりやすい生活などさまざまな原因により、ドライアイやドライアイ症状が引き起こされることが知られています。
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ドライアイ(症状)への対処法は?
目の機能低下による病気としてのドライアイへの対処法は、基本的には医師が診断した結果で決まりますので、ここではドライアイのような症状がある場合の対処法を中心にご紹介します。「ドライアイかも?」と感じたときには、その症状に適切に対処することが必要です。
目薬を使用する1)~4)
ドライアイの症状が軽い場合は、市販の目薬を使用することによって症状が改善する場合があります。目の潤いを保つ効果があるヒアルロン酸ナトリウムやコンドロイチン硫酸ナトリウムなどが配合されている目薬を選びましょう。コンタクトレンズを装用している場合には、レンズへの吸着を避けるため、防腐剤の入っていない目薬を使用してください。
実際に市販の目薬を購入する際には薬剤師と相談し、症状に合った適切な目薬を選びましょう。また、目薬の使い過ぎに注意して、用法・用量を守って正しく使用しましょう。
ただし、市販の目薬を数日間使用しても症状の改善がみられない場合には、使用を中止し、必ず眼科を受診してください。
眼科を受診する1)~4)
ドライアイ症状の原因は、人それぞれ違います。ドライアイという病気が目にある場合もありますし、目の涙の状態には大きな異常はないものの、環境的因子によってドライアイ症状がみられる場合もあります。もちろん、その両方の場合もあります。ドライアイ症状は見え方にも影響し、眼精疲労の原因にもなりえます。また、目の傷などのトラブルを引き起こす場合もあります。チェックシートなども活用し、少しでも気になる症状がある場合には、眼科を受診しましょう。
眼科では、市販の目薬とは違うタイプでの点眼治療を行ったり、涙点(るいてん:上下のまぶたの端にある、涙が流出していく点)を栓(涙点プラグ)で塞いだりすることで、涙液の流失を妨げて涙をためる治療法などが行われます。
まぶたを温める6),10)
マイボーム腺の機能不全によるドライアイの場合、温罨法(おんあんぽう)が有効です。温罨法とは、目の周辺を温めることでマイボーム腺の脂を溶かし、まぶたの血流を改善するものです。2023年2月に公表されたマイボーム腺機能不全診療ガイドラインでは、この温罨法がエビデンスレベルA(強)で強く推奨されています。
この温罨法で一番重要なことは、まぶたの温度、マイボーム腺周囲の温度をある程度上昇させて、一定時間保つ必要があるということです。蒸しタオルでは、1分で約5℃ずつ温度が下がってしまうため、より高い治療効果を得るためには、温罨法用のデバイスやホットアイマスクなどが良いとされています。
ドライアイ症状の予防法は?
日常生活のちょっとしたことに気をつけるだけでも、ドライアイ症状を予防することができます。ここでは、手軽にできるドライアイ症状の予防法についてご紹介します。
目を定期的に休ませる
ドライアイ症状を引き起こしやすいライフスタイルや環境があります。まずは日常生活を見直し、ドライアイ症状につながる生活習慣や状況を減らすことから始めましょう。例えば、パソコンを使って作業をする場合は、1時間ごとに10~15分程度の休みを取り、窓の外をぼんやり見たりするなどして、目を休めると良いでしょう8),9)。
意識的にまばたきを行う1)~4)
まばたきが不完全になったり回数が減ったりすると、涙が目の表面全体に行きわたらず、ドライアイ症状を引き起こします。目が乾燥しやすいと感じたら、意識的にまばたきを行いましょう。特に、デジタル機器の使用中は、目より高い位置に画面があると、まばたきをしても完全に目が閉じない、まばたき不全の状態になることがあるので、画面が目よりも低い位置に来るように画面の位置を調整しましょう。
自分の目に合ったコンタクトレンズを使用する
コンタクトレンズの種類を変更してみるのも選択肢の1つです。コンタクトレンズの種類や素材を変えることで、ドライアイ症状が改善される場合があります。レンズ表面の涙が安定しやすい、目の乾燥感を覚えにくい、上まぶたがスムーズに移動し摩擦を起こしにくいなどの特長をもったレンズもあるので、興味がある方は眼科医に相談してみましょう。
エアコンや加湿器を適切に使う
室内の冷暖房は空気を乾燥させます。また、涙の蒸発量が増えて目も乾燥してしまいます。加湿器などをうまく使い、空気が乾燥し過ぎないように気をつけましょう。エアコンの風が直接あたるような場所にいると、涙の蒸発量がさらに増えて乾燥しやすいので、直接あたらないように風向きを調整するようにしましょう。
アイメイクは控えめにする
まぶたの中には、マイボーム腺と呼ばれる涙の蒸発を防ぐ油分を分泌する器官があります。マイボーム腺はまつ毛の生え際のやや内側から油分を分泌しています。そこにアイメイクをして腺を塞いでしまうと、メイクや汚れをきちんと落としきれず、油分が正しく分泌されなくなる可能性があります。その結果、ドライアイの発生や悪化につながる場合があるため、まつ毛の内側のアイメイクは控えましょう。
まとめ
ドライアイになると、「目が乾燥する」「目がゴロゴロする」などのつらい症状が長期間続きます。基本的に完治することはありませんが、治療をすれば症状を緩和することが可能です。ドライアイかも?と感じたら、眼科医に相談しましょう。また、ドライアイではないものの、目が乾燥するドライアイ症状は、日常生活のちょっとしたことに気をつけるだけでも予防することができますので、試してみるといいでしょう。
<参考資料>
1) ドライアイ研究会
2) 公益財団法人 日本眼科学会:目の病気 ドライアイ
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=9
3) ドライアイ研究会診療ガイドライン作成委員会:ドライアイ診療ガイドライン
4) 医療情報科学研究所 編:「病気がみえる vol.12 眼科」 第1版 メディックメディア, 2019
5) de Paiva CS, et al.:Int Ophthalmol Clin 57(2):47-64, 2017
6) LIME 研究会:マイボーム腺機能不全とは? くわしく解説!
https://lime.jp/public/booklet.html
7) Lemp MA, et al.:Cornea 31(5):472-478, 2012
8) 公益社団法人 日本眼科医会:目についての健康情報
https://www.gankaikai.or.jp/health/index.html
9) 厚生労働省:令和3年12月1日 基発1201第7号 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて
https://www.mhlw.go.jp/content/000539604.pdf
10) マイボーム腺機能不全診療ガイドライン作成委員会:マイボーム腺機能不全診療ガイドライン
https://dryeye.ne.jp/wp/wp-content/themes/dryeye/file/mgd-guidline-20230210.pdf