花粉症がコンタクトレンズ装用に及ぼす影響と対策
作成日:2022/12/08 更新日:2024/11/13
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花粉症でコンタクトレンズを装用した場合の影響
花粉の飛散時期に、花粉症患者がコンタクトレンズを装用し続けると、目やレンズにどのような影響があるのかについて見ていきたいと思います。主に、以下の3つが考えられます。
アレルギー性結膜炎が悪化する
花粉などの異物が目から侵入すると、アレルギー性結膜炎を発症し、目のかゆみ、充血、目やになどの症状が現れます。コンタクトレンズ装用中に目をこすってしまうと、コンタクトレンズの機械的刺激も相まって、角膜(黒目)が傷ついたり、アレルギー性結膜炎の症状も重症化したりする可能性があります。コンタクトを外した状態でもかゆみや違和感がある場合は、コンタクトレンズの使用を中止し、眼科を受診しましょう。
コンタクトレンズがずれやすくなる
花粉によるアレルギー性結膜炎が起きている状態で、長時間コンタクトレンズを装用していると、上まぶたの裏側に炎症が起こることがあります。炎症によってまぶたの裏側にぶつぶつ(乳頭)ができると、まばたきをするたびにレンズが引っ掛かり、コンタクトレンズが上の方に頻繁にずれたり、レンズがすぐに汚れてしまったりしやすくなります。これを「巨大乳頭結膜炎」といい、眼科での治療が必要になります。
コンタクトレンズがくもる
花粉症を発症すると、目やにや涙が出やすくなり、レンズが汚れることがあります。このような場合は、まず眼科を受診しましょう。コンタクトレンズの汚れは専用のケア剤で落とすことができますが、レンズケアが不十分だと汚れが残ってしまい、視界が悪くなる場合があります。十分な洗浄を行ってもコンタクトレンズがきれいにならない場合には、使用期間が残っていても、新しいものと交換した方がいいでしょう。
コンタクトレンズ装用者の花粉対策
花粉シーズンにおいて、目のアレルギー症状を予防し悪化を防ぐには、日常生活の中で、アレルギーの原因物質である花粉を、できるだけ目に持ち込まないようにすることが重要です。花粉症をはじめとしたアレルギー性結膜炎の場合には、その程度によってはコンタクトレンズ装用を中止する必要がある場合もあります。眼科医から装用可能と判断され、コンタクトレンズを使っている人が、花粉シーズンに実践したい対策として、次のようなものがあります。
眼鏡を活用する
花粉によるアレルギー性結膜炎が起こっている場合には、なるべく目に負担をかけないことが大切です。コンタクトレンズを中止して眼鏡で生活したり、コンタクトレンズの上から伊達眼鏡やゴーグル型の眼鏡をしたりしてみるといいでしょう。
眼鏡を使用すると、目に入る花粉の量がおよそ40%減少し、防御カバー付きの花粉症用眼鏡では、およそ65%減少することがわかっています3)。
マスクと一緒に眼鏡を使用するときは、眼鏡にくもり止めをしておくことをおすすめします。
コンタクトレンズを1 dayタイプにする
コンタクトレンズに付着した花粉は、念入りに手入れをしても完全には取り除けません。花粉が付着したままのコンタクトレンズを使い続けると、アレルギー性結膜炎を悪化させてしまいます。
1dayタイプ(1日使い捨て)のコンタクトレンズであれば、花粉がレンズに付着しても1日の装用で廃棄するので、毎日、花粉の付着がないレンズで装用を開始することができます。また、花粉が多い日は、コンタクトレンズを装用しないという調整も可能しやすいです。普段、2weekタイプ(2週間頻回交換)や1monthタイプ(1ヵ月定期交換)のレンズを使っている人も、花粉シーズン中は、毎日新しいレンズに取り換える1dayタイプを試してみるのもいいでしょう。
早めに眼科を受診する
毎年、同じ時期に花粉症の症状が出る人は、早めに眼科を受診し、花粉飛散期前から行う早めの対策や治療に関するアドバイスを受けるといいでしょう。
その他、外出するときに帽子をかぶったり、外出先から帰宅したときにうがいや手洗いをしたり、家にいるときには花粉が家の中に入ってこないようにすることも、セルフケア対策として有効です。
まとめ
日々の生活の中で、いろいろな花粉症対策を試してみてください。大事なことは花粉をできるだけ目に持ち込まないようにすることです。毎年花粉症に悩まされている人は、花粉飛散前からの対策も含め、眼科医に相談してみるといいでしょう。
<参考資料>
1) 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会 編:「2024年版 鼻アレルギー診療ガイドライン ─通年性鼻炎と花粉症―」 改訂第10版, 2024
2) 渡辺 英臣 他:日本の眼科 90(9):1194-1216, 2019
3) 環境省:花粉症環境保健マニュアル 2022
https://www.env.go.jp/content/900406385.pdf