翼状片とは、結膜が三角状に盛り上がりながら、角膜の中央に向かって侵入していく病気です。通常は30歳代以降に発症し5)、一般的に症状はゆっくりと進行していきます。多くは鼻側、まれに耳側結膜より角膜に向かって侵入します。結膜が侵入したときの形状が、鳥の翼に似ていることから、翼状片と名付けられました。発症機序は不明ですが、北極圏や赤道部地域、野外労働者に多くみられることから、紫外線曝露を含めた外的刺激が、その発症に大きくかかわっていると考えられています。
翼状片とは? 症状やコンタクトレンズによる目の紫外線対策について
作成日:2023/01/18 更新日:2024/05/16
翼状片とは1)~5)
翼状片の症状
目の充血や異物感がみられます。角膜への侵入が大きくなると不正乱視などを引き起こし、視力低下につながります。
翼状片の治療
悪性ではないため、翼状片がそれほど進行していない初期の段階では、必ずしも治療は必要ありませんが、充血や異物感が強い場合には、その軽減のために低濃度ステロイドや、非ステロイド系抗炎症薬による対症療法を行います。ただし、薬物療法では病変の進行を食い止めることはできないので、病変が拡大した場合には、手術で角膜に侵入した結膜を切除します。
紫外線が目に与える影響5)~8)
紫外線は夏だけではなく、一年中私たちの身体に降り注いでいます。紫外線を浴びて日焼けをするのは肌だけではありません。目も紫外線の影響を受けています。日焼け止めなどで、顔や身体のUV対策をする人は多いのですが、余り知られていないのが目の紫外線対策です。
紫外線は目に入る際、その多くが眼球表面の角膜で吸収され、一部は目の中へ侵入します。これが目のダメージとなって蓄積すると、翼状片や白内障といった病気の原因となる可能性があります。実際、目の紫外線曝露量が多い地域では、核白内障の有所見率が高く7)、老視や白内障の発症年齢が若い傾向にある8)ことが報告されています。
こうしたリスクを考えると、肌だけでなく、目への紫外線対策もしっかり心がけたいものです。
コンタクトレンズで紫外線対策は可能?1),5),6)
このように紫外線はさまざまな目の病気に関係していると考えられているため、目の紫外線対策も忘れずにしたいですね。
サングラスでもある程度は有効ですが、紫外線は正面からだけでなく、レンズの横や上下の隙間からも入ってきます。また、空からの紫外線だけでなく、地面からの照り返しにも注意が必要です。紫外線量は、サングラスを使うにはまだ早いかな?という春先から徐々に増えてきます。
実はコンタクトレンズは製品によって、UVカット*加工が施されているものとそうでないものがあります。コンタクトレンズで視力補正をしている方は、季節や天候を問わずコンタクトレンズを装用しますので、UVカット付き製品であれば視力補正と一緒に紫外線カットもできて、一石二鳥ではないでしょうか。どの製品がUVカット付きなのかは、眼科で聞いてみましょう。
まとめ
私たちの目に見えない紫外線。量の多寡こそあれ、季節や天候を問わず、常に私たちに降り注いでいます。さまざまな目の病気との関連も報告されていますので、目の紫外線対策も忘れずにしたいですね。コンタクトレンズには、UVカット付きとそうでないものがありますので、ご自身がお使いの製品について一度眼科でご確認されてはいかがでしょうか。
*:UV吸収剤を配合したコンタクトレンズは、UV吸収サングラスなどの代わりにはなりません。
<参考資料>
1) 佐々木 洋:あたらしい眼科 34(5), 673-674, 2017
2) 大路 正人 他 編:「今日の眼疾患治療指針」 第4版 医学書院, 2022
3) 眞鍋 禮三 他 監:「角膜クリニック」 第3版 医学書院, 2021
4) 医療情報科学研究所 編:「病気がみえる vol.12 眼科」 第1版 メディックメディア, 2021
5) 環境省:紫外線環境保健マニュアル2020
https://www.env.go.jp/chemi/matsigaisen2020/matsigaisen2020.pdf
6) 植田 喜一 編:「眼科スタッフのためのCL(コンタクトレンズ)で困ったときに開く本」 第1版 メディカ出版, 2009
7) 初坂 奈津子:日本白内障学会誌 29(1):40-44, 2017
8) Miranda MN:Trans Am Ophthalmol Soc 77:603-621, 1979