角膜感染症とは、角膜(くろ目)に、細菌(ブドウ球菌、緑膿菌など)、カビ(真菌)、アカントアメーバ、ウイルスなどの病原性をもった微生物が侵入し、増殖することによって炎症を起こす病気です。通常、角膜の表面は角膜上皮という組織で覆われているため、病原菌は容易には侵入できません。ところが何らかの理由によってこの角膜上皮に傷ができてしまうと、角膜のバリア機能が低下し、そこから微生物が侵入し、繁殖しやすくなってしまいます。なお、角膜感染症の中で、コンタクトレンズ装用者に多く発症するのは、細菌性角膜炎とアカントアメーバ角膜炎です。
角膜感染症とは?原因や症状、コンタクトレンズ装用者が注意すべき点を解説
作成日: 2023/01/17 更新日: 2024/11/13
角膜感染症とその原因菌 3)~7)
角膜感染症の症状 3)~7)
角膜感染症の症状は、感染の原因菌や重症度によってさまざまですが、角膜感染症になると、目の痛み、目やに、充血、涙、まぶたの腫れなどの症状がみられます。さらに症状が進行すると、角膜が白く濁って視力が低下し、失明に至ることもあるため、早期治療が必要です。
コンタクトレンズ関連角膜感染症の実態 1)~4)
近年、わが国で増加している角膜感染症ですが 4)、2003年に実施された「感染性角膜炎全国サーベイランス」 1)では、調査対象となった角膜感染症患者のうち41.8%がコンタクトレンズ装用者で、年齢別では10代が96.3%と最も高く、次いで20代が89.8%で、低年齢層で多いことが報告されています。このような角膜感染症にかかってしまうコンタクトレンズ装用者には、何か共通した背景があるのでしょうか。
2007年から2009年に実施された「重症コンタクトレンズ関連角膜感染症全国調査」 2)では、コンタクトレンズ関連角膜感染症の2大原因菌は、緑膿菌とアカントアメーバで、検出部位は、角膜病巣とコンタクトレンズケースに多いことが報告されています。さらにこの調査から、重症のコンタクトレンズ関連角膜感染症患者では、コンタクトレンズの洗浄を毎日していない人が約半数、コンタクトレンズのこすり洗いを毎日していない人が約7割、レンズケース交換をほとんどあるいは全くしていない人が約3割など、不適切なレンズケアや、就寝時は外すべきコンタクトレンズを外さないで寝るなど、誤った装用方法の実態が明らかになっています 2),3)。
コンタクトレンズ装用者が注意すべき点
では、コンタクトレンズ装用者が角膜感染症にならないためには、どうすればいいのでしょう。細菌に感染して細菌性角膜炎になったり、アカントアメーバに感染してアカントアメーバ角膜炎になったりしないように注意する必要があります。そのためには、目に雑菌を持ち込まないよう、毎日のレンズケアが非常に重要です。特に、ソフトコンタクトレンズは素材に水を含み、雑菌が繁殖しやすいため、こすり洗いもきちんと行う必要があります。
水道水は滅菌されているわけではないので、角膜感染症の原因になりうる細菌や微生物が存在する可能性があります。そのため、水道水でソフトコンタクトレンズを洗浄したり保存したりするのは絶対にやめてください。このことから、水泳や入浴時には、レンズを外す必要があるとされています。また、コンタクトレンズケースでも微生物が繁殖するため、コンタクトレンズケースは毎回洗浄、乾燥させ、定期的に新しいものに交換しましょう。
まとめ
角膜感染症予防のためにも、眼科医の指示のもと、コンタクトレンズを正しく装用し、適切なレンズケアを行い、目の健康を守るように心がけましょう。
<参考資料>
1) 感染性角膜炎全国サーベイランス・ スタディグループ:日眼会誌 110(12):961-972, 2006
2) 宇野 敏彦 他:日眼会誌 115(2):107-115, 2011
3) 日本コンタクトレンズ学会:コンタクトレンズ診療ガイドライン(第2版)
https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/contact_lens2.pdf
4) 公益財団法人 日本眼科学会:目の病気 角膜感染症
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=17
5) 前田 直之 他 編:「新篇眼科プラクティス 9 必読! コンタクトレンズ診療」 第1版 文光堂, 2023
6) 中澤 満 他 編:「標準眼科学」 第14版 医学書院, 2018
7) 所 敬 監:「現代の眼科学」 改訂第13版 金原出版, 2018