コンタクトレンズは角膜(黒目)の上にのせて使うものですが、実はレンズと角膜は直接触れているわけではありません。コンタクトレンズと角膜の間には涙があります。さらにレンズの上にも薄い涙の層があります。つまり、コンタクトレンズは涙の層でサンドイッチされているような状態になっています。そのため、コンタクトレンズ装用時の快適性や見え方は、涙の質や量などの状態に大きく影響を受けることになります。
コンタクトレンズと涙の関係について
作成日: 2022/12/14 更新日: 2024/06/20
コンタクトレンズと涙は密接な関係にある1),2)
涙の主な役割1),2)
涙には、主に、次のような役割があります。
酸素や栄養を目に届ける
目の健康のためには酸素や栄養が必要ですが、角膜には血管がないため、血液中の赤血球が運ぶ酸素を受け取ることができません。そのため、空気中から涙に溶け込んだ酸素を使っています。ハードコンタクトレンズの場合は角膜とレンズの間の涙がある程度入れ替わるので、酸素を多く含んだフレッシュな涙が入ってきますが、ソフトコンタクトレンズの場合は角膜とレンズの間の涙がほとんど入れ替わらないため、コンタクトレンズ自体の酸素透過性(酸素の通りやすさ)がより重要になります。
まばたきに伴う摩擦を減らす
まばたきは上のまぶたが目の表面を上下にスライドする動作です。このとき、目の表面とまぶたの裏の結膜(白目)の間には摩擦が発生します。この摩擦が大きいと、まばたきに伴ってゴロゴロする感覚が生まれることがあります。
コンタクトレンズ装用時に、目がゴロゴロするなどの違和感を覚えた経験はありませんか?その違和感も、まばたきに伴う摩擦が原因かもしれません。裸眼の時とは違い、コンタクトレンズ装用時は上のまぶたは目の表面ではなくコンタクトレンズの表面を上下にスライドすることになります。コンタクトレンズの表面の涙が不安定だと、まばたきの際に摩擦が大きくなり、違和感の原因となります。コンタクトレンズの表面に涙がしっかり保持されていると、まばたきの際の摩擦は軽減され、快適な装用の一助になります。
目に入ったゴミや刺激物を洗い流す
ゴミや煙などの刺激物が目に入ると、反射的に涙が分泌され、異物を洗い流すとともに刺激をやわらげてくれます。「玉ねぎを切ったら涙が出る」というのも、この反射性の涙です。コンタクトレンズに付着した汚れが目に入ってしまった場合も、この涙の自浄作用により、汚れを洗い流してくれています。
目の乾燥を防ぐ
人は1分間に15~20回まばたきをすることが知られていますが、まばたきをすることで新しい涙が分泌されたり、下まぶたのところにたまった涙が目の表面に塗り直されたりして、目の表面の乾燥を防いでいます。また、古い涙も排出されていき、涙の入れ替わりも同時に起こります。
まとめ
涙にはさまざまな役割があり、目の健康を守る上で重要な役割を担っています。そんな涙が不足していたり、不安定だったりすると、とりわけコンタクトレンズ装用時には不快感や角膜の傷などの目のトラブルにつながることもあります。何か普段と違うなど、違和感や気になる点があれば、早めに眼科を受診するようにしましょう。
<参考資料>
1) 前田 直之 他 編:「新篇眼科プラクティス 9 必読! コンタクトレンズ診療」 第1版 文光堂, 2023
2) 坪田 一男 他 編:「眼科プラクティス 27. 標準コンタクトレンズ診療」 第1版 文光堂, 2009