コンタクトレンズを外した後のコンタクトレンズとレンズケースの正しいケア方法(使い方)について
作成日:2022/12/14 更新日:2024/11/13
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コンタクトレンズの正しいケア方法(使い方)
眼科医の処方を受けたコンタクトレンズを使用していても、レンズケアが不適切だったり、レンズが汚れていたりすると、快適に装用できなくなるだけではなく、重篤な眼障害につながる場合もあります。コンタクトレンズの装用に伴うレンズの汚れ具合は人それぞれですので、コンタクトレンズの種類、汚れの程度や種類、装用者の性格、目の状態などを考慮して、個々の使用者に合った適切なレンズケアを使用することが必要です1)。
コンタクトレンズは素材によって、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズに分けられます。これらのケア方法は異なりますので、それぞれのケア方法をご紹介します。
ハードコンタクトレンズの正しいケア方法(使い方)
ハードコンタクトレンズの洗浄方法には、「つけおき洗浄」と「こすり洗い」があります1)。ハードコンタクトレンズは水分をほとんど含まないプラスチック素材でできているため、ソフトコンタクトレンズと比べて雑菌が付着・繁殖しにくいのですが、毎日の洗浄で落とし切れなかった汚れは、コンタクトレンズの表面に蓄積していきます。快適でクリアな視界を維持するために、毎日外した後はこすり洗いをするようにしましょう1)。
つけおき洗浄
つけおき用の洗浄液には汚れを分解する酵素が入っているため、コンタクトレンズを洗浄液につけておくだけで洗浄が完了します。このタイプの洗浄液には、洗浄も保存も1本でできるタイプと、1液(酵素洗浄液)と2液(希釈液、すすぎ・保存液)に分かれているタイプがあります。
こすり洗い
こすり洗い用洗浄液には、研磨剤が入っているものと、入っていないものがあります。研磨剤入りの洗浄液は、表面加工が施されたコンタクトレンズには使用できないので、自分の使っているレンズが表面加工されていないものであることを確認してから使用するようにしましょう。
つけおき洗浄(こすり洗い併用)の手順1)
こすり洗いを併用した場合の、つけおき洗浄(2液型)の手順は下記のようになります。
1. 清潔な手でレンズを外し、レンズを水道水か専用すすぎ液ですすぎ、洗浄保存液か洗浄液でこすり洗いを行い、水道水か専用すすぎ液でよくすすぐ。
2. 保存液か洗浄保存液を満たしたレンズケースに液体酵素を1、2滴落とし(2液型の場合)、レンズを保存(通常、4時間以上つけおき)。
3. レンズ装用時には、洗浄保存液か洗浄液でこすり洗いを行い、水道水か専用すすぎ液でよくすすぐ。
強力タンパク除去
毎日のレンズケアでは落ちない汚れに対して、定期的に強力タンパク除去を行いましょう。洗浄剤にもよりますが、強力タンパク除去の頻度は、1週間または1ヶ月に1回ほど、定期的に、あるいは、汚れが強くて落ちないときに行いましょう。
ソフトコンタクトレンズの正しいケア方法(使い方)
コンタクトレンズを清潔に保ち、目の健康を維持するためには、レンズの正しいケアが不可欠です。特に、ソフトコンタクトレンズはレンズがイオン性のものもあり、レンズ素材に水分を含むため、微生物が接着しやすく、汚れも付着しやすいという特徴があります2),3)。そのため、洗浄、すすぎ、消毒を行うレンズケアが義務付けられており、また、再使用するタイプのレンズでは、保存もレンズケアの一環とされています3)。
ソフトコンタクトレンズは、専用のケア剤(消毒剤)で洗浄します。ソフトコンタクトレンズ用の消毒剤としては、主に、「過酸化水素製剤」、「ポビドンヨード製剤」、「マルチパーパスソリューション(MPS)」の3種類があります。
過酸化水素製剤3)~5) , *1
過酸化水素製剤は、MPSより消毒効果が高いという利点があります。ケア方法としては、消毒剤を満たしたレンズケースに、外したコンタクトレンズをセットし、中和剤を入れて*26時間以上放置するだけです。中和が不完全だと、コンタクトレンズを装用した際に、眼障害を起こすことがあるので注意が必要です。
また、カラーコンタクトレンズには使用できない製品もあるため、カラーコンタクトレンズに使用する場合は、使用する製品の添付文書(取扱説明書)をよく読み、正確に理解した上で使用するようにしましょう。
ポビドンヨード製剤3)~5), *1
ソフトコンタクトレンズ用ケア剤の中で、最も消毒効果が高いのがポビドンヨード製剤です。特に、タンパク質を除去するタンパク質除去剤が入った製品は、コンタクトレンズのくもりや乾燥感が気になる方におすすめです。消毒・中和錠と溶解・すすぎ液をレンズケースに入れ、約4時間後には中和が完了します。中和が完了するとオレンジ色の液が無色に変わります。レンズケース内の液やレンズが無色になっていることを確認し、新しい溶解・すすぎ液を使ってレンズを手のひらでよくすすいでから装用してください。
なお、ポビドンヨード製剤は、ヨウ素にアレルギーがある方や、甲状腺に関連した病気を抱えている方は、使用することができないのでご注意ください。
MPS3)~5), *1
MPSは、1剤で洗浄・すすぎ・消毒・保存というソフトコンタクトレンズケアの全ての過程を行うことができる便利なケア剤です。中和が必要な過酸化水素製剤やポビドンヨード製剤と比べ、手軽に扱えて便利という利点はありますが、レンズのこすり洗いが毎日必要です。こすり洗いの後はMPSでレンズをよくすすぎ、レンズケース内でレンズ全体がMPSに十分つかるようにして保管します。
MPSは、従来、便利なケア剤である反面、消毒効果が過酸化水素製剤やポビドンヨード製剤より劣るとされてきました。しかし近年、過酸化水素製剤と同等の消毒効果を持つマルチパーパス ディスインフェクティングソリューション(MPDS)に属する製品が登場しています。MPDSの使い方はMPSと同じですが、優れた消毒効果を発揮するだけでなく、タンパク質や脂質による汚れもしっかりと落としてくれます。
MPSを使用したケア方法の手順3)~5), *1
ケア剤としてMPSを使用した場合の、2weekタイプ(2週間頻回交換)のソフトコンタクトレンズの基本的なケア方法の手順は、下記のようになります。
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コンタクトレンズケースの正しいケア方法(使い方)1),5)
コンタクトレンズケースのケアも大切です。いくらコンタクトレンズを正しくケアしても、レンズケースが汚れていてはレンズを清潔に保つことができません。レンズだけでなく、外したレンズを入れるレンズケースの手入れもしっかりと行いましょう。
レンズケースに細菌やカビが増えないよう、ケース内のケア剤は毎回必ず捨て、よく洗い、ふたを開けたまま清潔な場所で自然乾燥させてください。また、レンズケースを長期間使用していると、汚れなどの蓄積により細菌などの繁殖をまねくことがあるため、定期的に交換するようにしましょう。
一例として、日本コンタクトレンズ学会では、レンズケースの交換頻度の目安を、ハードコンタクトレンズでは6ヵ月~1年に一度、ソフトコンタクトレンズでは1.5ヵ月~3ヵ月に一度としています。
まとめ
目は非常にデリケートで、コンタクトレンズやコンタクトレンズケースのケアを怠ると、さまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。目の健康を守るために、毎日しっかりと、正しいケアを行いましょう。
*1:使用方法は製品により若干異なります。詳細は各製品添付文書(取扱説明書)でご確認ください。
*2:コンタクトレンズを入れるカップに中和用ディスクが固定されていて、中和剤を入れる必要がないタイプもあり、中和方法は製品により異なります。
<参考資料>
1) 日本コンタクトレンズ学会:一般の皆様へ 正しいコンタクトレンズのケア
http://www.clgakkai.jp/general/study.html
2) 大橋 裕一 編:「専門医のための眼科診療クオリファイ 6 コンタクトレンズ自由自在」 初版 中山書店, 2011
3) 前田 直之 他 編:「新篇眼科プラクティス 9 必読! コンタクトレンズ診療」 第1版 文光堂, 2023
4) 日本コンタクトレンズ学会:コンタクトレンズ診療ガイドライン(第2版)
http://www.clgakkai.jp/pdffiles/contact_lens2.pdf
5) 一般社団法人 日本コンタクトレンズ協会:コンタクトレンズとは ケア用品について
https://www.jcla.gr.jp/contactlens/care.html
6) アキュビューⓇ ユーザーガイド:1. 装用方法・ケアについて
https://acuvue.com/ja-jp/new-wearer/new-wearer-guide