コンタクトレンズの正しい洗い方は?ハード・ソフト種類別に解説
作成日:2024/11/13 更新日:2024/11/13

コンタクトレンズの正しいケア方法
眼科医の処方を受けたコンタクトレンズを使用していても、レンズケアが不適切だったり、レンズが汚れていたりすると、快適に装用できなくなるだけでなく、重篤な眼障害につながる場合もあります。コンタクトレンズの装用に伴うレンズの汚れ具合は人それぞれですので、コンタクトレンズの種類、汚れの程度や種類、装用者の性格、目の状態などを考慮して、個々の使用者に合った適切なレンズケアを使用することが必要です1)。
コンタクトレンズは素材によって、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズに分けられます。これらのケア方法は異なりますので、それぞれのケア方法をご紹介しますが、まず、ハードとソフトに共通するコンタクトレンズを取り扱う際の注意点や、こすり洗いの必要性について確認しておきましょう。
コンタクトレンズを取り扱う際の注意事項1),2)
ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズに関係なく、コンタクトレンズを取り扱う際には、下記のような点に注意しましょう。
- 目やレンズを傷つけないよう爪を短く切り丸くなめらかにしてください。
- コンタクトレンズを取り扱う前には、必ず石けんで手を洗い、きれいな布などで手を拭いておきましょう。
- コンタクトレンズのつけ外しは、落としても見つかりやすい場所で行うようにしましょう。
- コンタクトレンズの装用前には、レンズの傷、破損、変形、汚れの有無を確認してください。
- コンタクトレンズを舐めてはいけません。
- お化粧はコンタクトレンズをつけてから、お化粧落としはコンタクトレンズを外してから行いましょう。
- (お化粧をするときも落とすときも、コンタクトレンズファーストです!)
- コンタクトレンズを外した後には、レンズだけでなくレンズケースのケアもきちんと行いましょう。
こすり洗いの必要性1)
こすり洗いは強力な洗浄方法で、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズともに、こすり洗いは欠かせません。レンズをこすり洗いすることにより、目の分泌物であるタンパク質や脂質を落とし、微生物も1000分の1程度に減らすことができます。「こすり洗い不要」と書かれたつけおき洗浄のケア剤であっても、実際にはこすり洗いを併用しないと洗浄効果が著しく落ちるといわれています。特に、ソフトコンタクトレンズの場合は、こすり洗いをすることで洗浄効果も消毒効果も発揮されるため、どの洗浄方法を行う場合にも、こすり洗いを併用することが推奨されています。
ただし、ソフトコンタクトレンズでは、研磨剤の入ったケア剤は使用できません。眼科医の指示に従い、装用中のコンタクトレンズに合ったケア剤を適切に使用するようにしましょう。
ハードコンタクトレンズの正しい洗い方1)
ハードコンタクトレンズの洗浄方法には、「つけおき洗浄」と「こすり洗い」があります。ハードコンタクトレンズは水分をほとんど含まないプラスチック素材でできているため、ソフトコンタクトレンズと比べれば雑菌が付着・繁殖しにくいのですが、毎日の洗浄で落とし切れなかった汚れは、コンタクトレンズの表面に蓄積していきます。快適でクリアな視界を維持するために、レンズを外した後は、毎日こすり洗いをするようにしましょう。
つけおき洗浄
つけおき用の洗浄液には汚れを分解する酵素が入っているため、コンタクトレンズを洗浄液につけておくだけで洗浄が完了します。このタイプの洗浄液には、洗浄も保存も1本でできるタイプと、1液(酵素洗浄液)と2液(希釈液、すすぎ・保存液)に分かれているタイプがあります。ハードコンタクトレンズのケア剤のほとんどは、つけおきタイプです。
こすり洗い
こすり洗い用洗浄液には、研磨剤が入っているものと、入っていないものがあります。研磨剤入りの洗浄液は、表面加工が施されたコンタクトレンズには使用できないので、自分の使っているレンズが表面加工されていないものであることを確認してから使用するようにしましょう。
つけおき洗浄(こすり洗い併用)の手順
こすり洗いを併用した場合の、つけおき洗浄(2液型)の手順は下記のようになります。
1. 清潔な手でレンズを外し、レンズを水道水か専用すすぎ液ですすぎ、洗浄保存液か洗浄液でこすり洗いを行い、水道水か専用すすぎ液でよくすすぐ。
2. 保存液か洗浄保存液を満たしたレンズケースに液体酵素を1、2滴落とし(2液型の場合)、レンズを保存(通常、4時間以上つけおき)。
3. レンズ装着時には、洗浄保存液か洗浄液でこすり洗いを行い、水道水か専用すすぎ液でよくすすぐ。
ソフトコンタクトレンズの正しい洗い方
コンタクトレンズを清潔に保ち、目の健康を維持するためには、レンズの正しいケアが不可欠です。特に、ソフトコンタクトレンズはレンズがイオン性のものもあり、レンズ素材に水分を含むため、微生物が接着しやすく、汚れも付着しやすいという特徴があります3),4)。そのため、洗浄、すすぎ、消毒を行うレンズケアが義務付けられており、また、再使用するタイプのレンズでは、保存もレンズケアの一環とされています4)。
ソフトコンタクトレンズは、専用のケア剤(消毒剤)で洗浄します。ソフトコンタクトレンズ用の消毒剤としては、主に、「マルチパーパスソリューション(MPS)」、「過酸化水素製剤」、「ポビドンヨード製剤」、の3種類があります。
MPSでの洗浄4)~7)
1剤で洗浄・すすぎ・消毒・保存というレンズケアの全ての過程を行うことができるMPSの基本的な使い方は下記の通りです。
1. 手を洗った後コンタクトレンズを外し、手のひらにのせ、MPSを数滴つける
2. レンズの両面を各々、20~30回指で一定方向に軽くこすりながら洗う
3. 洗ったレンズの両面をMPSで十分にすすぐ
4. レンズケースにMPSを満たし、その中にレンズを完全に浸し、ケースのふたをしっかり締める
(左右を間違えないよう注意)
5. 一定時間放置する
※:使用滴数、こすり洗いの回数・時間、すすぎ時間、放置時間等は製品により若干異なります。詳細は各製品添付文書(取扱説明書)でご確認ください。

中和が必要な過酸化水素製剤やポビドンヨード製剤と比べ、手軽に扱えて便利という利点はありますが、レンズのこすり洗いが毎日必要です。こすり洗いの後はMPSでレンズをよくすすぎ、レンズケース内でレンズ全体がMPSに十分つかるようにして保管します。
MPSは、従来、便利なケア剤である反面、消毒効果が過酸化水素製剤やポビドンヨード製剤より劣るとされてきました。しかし近年、過酸化水素製剤と同等の消毒効果を持つマルチパーパスディスインフェクティングソリューション(MPDS)に属する製品が登場しています。MPDSの使い方はMPSと同じですが、優れた消毒効果を発揮するだけでなく、タンパク質や脂質による汚れもしっかりと落としてくれます。
過酸化水素製剤での洗浄4)~7)
過酸化水素製剤は、MPSより洗浄・消毒効果が高いものの中和が必要です。過酸化水素製剤の基本的な使い方は、下記の通りです。
1. 手を洗った後レンズを外し、専用ケースのバスケットにセットする
(左右を間違えないよう注意)
2. 過酸化水素製剤(消毒剤)を専用ケースのガイドラインまで入れ、中和剤を入れる
3. 6時間以上そのまま放置して過酸化水素を中和する
4. 製品によってはレンズ装用の際、別売のすすぎ液や保存液でよくすすぐ
※:コンタクトレンズを入れるカップに中和用ディスクが固定されていて、別途中和剤を入れる必要がないタイプもあり、中和方法は製品により異なります。詳細は各製品添付文書(取扱説明書)でご確認ください。
過酸化水素製剤は、中和が不完全だと眼障害を起こすことがあるので、使用方法・放置時間を守ることが重要です。低温下(10℃以下)で消毒した場合は、中和完了までに、より長い時間かかる場合があります。消毒・中和後のレンズは、ケースのふたを開けなければそのまま保存することができます。ただし、保存開始から24時間を経過した場合、装用前にもう一度消毒・中和が必要な製品や、消毒・中和後の専用ケース内にレンズを7日以上保存しないよう使用上の注意に記載されている製品もあります。また、カラーコンタクトレンズに使用できない製品もあるため、使用する製品の添付文書(取扱説明書)をよく読み、正確に理解した上で使用するようにしましょう。
ポビドンヨード製剤での洗浄4)~7)
ソフトコンタクトレンズ用ケア剤の中で、最も消毒効果が高いのがポビドンヨード製剤です。特に、タンパク質を除去する蛋白質除去剤が入った製品は、コンタクトレンズのくもりや乾燥感が気になる方におすすめです。
1. コンタクトレンズを外し、専用レンズケースにレンズをセットする
2. 専用レンズケースに消毒・中和錠と溶解・すすぎ液をケースの線まで入れる
3. 専用レンズケースのふたを閉め、4時間以上放置する
(中和されるとオレンジ色の液が無色に変わる)
4. 新しい溶解・すすぎ液で、レンズを手のひらでよくすすぎ装用する
※:製品により使用方法等が若干異なりますので、詳細は各製品添付文書(取扱説明書)でご確認ください。
ポビドンヨード製剤は、中和が完了するとオレンジ色の液が無色に変わります。レンズケース内の液やレンズが無色になっていることを確認し、新しい溶解・すすぎ液を使ってレンズを手のひらでよくすすいでから装用してください。消毒・中和後のレンズは、ケースのふたを開けなければそのまま1週間まで保存することができます。1週間以上保存する場合は、1週間ごとに再度消毒・中和を行う必要があります。また、24時間以上保存したレンズを装用する場合にも、装用前にもう一度消毒・中和を行ってください。
ポビドンヨード製剤は、ヨウ素にアレルギーがある方や、甲状腺に関連した病気を抱えている方は使用することができないのでご注意ください。
コンタクトレンズのNGな洗い方
最後に、コンタクトレンズの洗い方のNGポイントを見ていきましょう。
指先の先端でこすり洗いをしている
指の先端でこすり洗いをすると、爪がレンズにあたって破損する原因になる場合があります。先端ではなく、指先の腹の部分でこすり洗いをするようにしましょう。
円を描くようにこすっている
こすり洗いをするときには、必ず一定方向に軽く動かすようにします。円を描くようにこすると、特に、ソフトコンタクレンズでは、破損原因になってしまいます。こすり洗いの回数が少ないと、きちんと汚れを落とすことができないので、十分にこすり洗いをしましょう。
ケア剤のボトルの先がレンズに触れている
外したコンタクトレンズにケア剤をつけるとき、うっかりボトルの先がレンズに触れて、汚れてしまわないように注意しましょう。
ソフトコンタクトレンズを水道水ですすいでいる
ハードコンタクトレンズは水道水ですすいでも問題ありませんが、水道水がソフトコンタクトレンズに付着すると、レンズが変形することがあります。眼科医の指導にそったコンタクトレンズ専用のケア剤ですすぐようにしましょう。
まとめ
こうしてみると、ついうっかり誤った洗い方をしてしまったことがある!なんてことはありませんでしたか?
清潔な手指を使って、しっかりと正しい方法でこすり洗いをすることは、目の健康を保つ上で大切です。きちんとケアできていないレンズには、汚れや細菌が付着していることがあります。目のトラブルを予防し、快適な見え方で毎日を過ごすために、正しい洗浄方法を学んでコンタクトレンズを安全に使うようにしましょう。
<参考資料>
1) 日本コンタクトレンズ学会:一般の皆様へ 正しいコンタクトレンズのケア
http://www.clgakkai.jp/general/study.html
2) 一般社団法人 日本コンタクトレンズ協会:コンタクトレンズとは コンタクトレンズの使用方法について)
https://www.jcla.gr.jp/contactlens/howtouse.html
3) 前田 直之 他 編:「新篇眼科プラクティス 9 必読! コンタクトレンズ診療」 第1版 文光堂, 2023
4) 日本コンタクトレンズ学会:コンタクトレンズ診療ガイドライン(第2版)
http://www.clgakkai.jp/pdffiles/contact_lens2.pdf
5) 一般社団法人 日本コンタクトレンズ協会:コンタクトレンズとは ケア用品について
https://www.jcla.gr.jp/contactlens/care.html
6) ケア剤の各社製品添付文書(取扱説明書)