結膜炎とは結膜に炎症が起こる病気です。結膜とは、角膜(黒目)周辺の白い部分から上下まぶたの裏側までを覆っている半透明の薄い膜で、粘液を分泌することで目の表面を潤し、さまざまな異物が目に侵入するのを防ぐ役割を担っています。と同時に、常に外界にさらされているため、細菌やウイルスといった微生物や、花粉やハウスダストといったアレルゲン(アレルギーの原因物質)に反応して炎症を起こしやすい場所でもあります。また、袋状の構造のため、異物がたまりやすいことも、細菌やウイルスの繁殖を助けてしまう場合があります。
結膜炎とは?コンタクトレンズはつけてもいい?
作成日: 2024/06/20 更新日: 2024/06/20
結膜炎とは? 1),2)
結膜炎の原因、主な種類と症状 1)〜5)
結膜炎は原因によって、大きく「ウイルス性結膜炎」、「細菌性結膜炎」、「アレルギー性結膜炎」の3種類に分けられます。ウイルス性結膜炎と細菌性結膜炎は感染性、アレルギー性結膜炎は非感染性に分類されます。
結膜炎の主な症状は、「目の充血」と「目やに」です。このほかに、目のかゆみや痛み、涙の増加、まぶたの腫れ、目の中がゴロゴロする異物感などを伴う場合もあります。また、結膜炎の種類によっては、発熱やのどの痛みなど、目には直接関係しない症状を伴うものもあります。
ウイルス性結膜炎
ウイルスの感染が原因で生じる結膜炎です。主なウイルス性結膜炎には、アデノウイルスによる「流行性角結膜炎(はやり目)」や「咽頭結膜熱(プール熱)」、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスによる「急性出血性結膜炎」などがあります。これらのウイルスによる感染力は非常に強いため、かかってしまった場合には他の人にうつさないよう、タオルを共有しないなど、配慮する必要があります。ウイルス性結膜炎では、目の症状が強く、通常、充血とともに大量の目やにが出ます。目やには、透明でさらっとしていることが特徴です。
学校などで集団発生することのある流行性角結膜炎や咽頭結膜熱は夏場に多く、急性出血性結膜炎は通年性です。流行性角結膜炎では目の症状が中心ですが、ほかにリンパ節の腫れや感冒様症状がみられることがあります。また、子どもに多い咽頭結膜熱では、目の充血、目やに加え、39℃前後の発熱やのどの痛みなどの全身性症状が現れます。
学校保健安全法による出席停止の基準5)
アデノウイルスなどによる結膜炎は非常に伝染性が強いので、学校内での集団感染を防ぐため、学校保健安全法により学校への出席停止期間が疾患ごとに定められています。咽頭結膜熱は第二種感染症で、「主要症状が消退した後2日を経過するまで」出席停止、流行性角結膜炎と急性出血性結膜炎は第三種感染症で、「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」は出席停止と定められています。
細菌性結膜炎
細菌の感染が原因で生じる結膜炎です。原因となる菌は多種多様で、一般細菌(黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌など)が原因で起こる「細菌性結膜炎」のほか、淋菌が原因の「淋菌性結膜炎」、クラミジア属菌(Chlamydia trachomatis)が原因の「クラミジア結膜炎」などがあります。細菌性結膜炎は免疫機能が弱い小児や高齢者に多く見られますが、感染力が弱いため、人から人へ感染することはほとんどありません。通常は片目のみに発症しますが、進行するにつれて、もう一方の目にも発症することがあります。細菌性結膜炎では、目の充血や浮腫、黄白色のネバネバした目やにが特徴です。
アレルギー性結膜炎
非感染性結膜炎は、アレルギー反応などによる「アレルギー性結膜炎」が主となります。花粉やハウスダスト、ダニ、ペットの毛やフケなどはアレルギー反応を引き起こすことがあり、「アレルゲン」と呼ばれます。アレルゲンによる結膜炎がアレルギー性結膜炎で、いわゆる花粉症がその代表です。結膜炎のほかに鼻炎を伴います。
花粉症といっても、症状の発現時期が限定されている「季節性アレルギー性結膜炎」と、一年を通じ、さまざまな種類の花粉に反応する「通年性アレルギー性結膜炎」があります。ハウスダストのように、時期を問わず身の回りにあるものも、通年性アレルギー性結膜炎の原因になりえます。
症状は両目にみられ、強いかゆみや目やにが特徴です。目の痛みや異物感、涙の増加などが見られることもあります。また、アレルギー性結膜炎では、アレルギー性鼻炎を合併することが多いため、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりなどの鼻症状のほか、倦怠感や微熱などの全身症状を伴うこともあります。なお、アレルギー体質の小学生の男児に多くみられる、比較的重症のアレルギー性結膜炎「春季カタル」にも注意が必要です。
結膜炎とコンタクトレンズ装用の関係 6),7)
結膜炎の症状がある人は、目やにが増えることからわかるように、目からの分泌物が多いため、コンタクトレンズが汚れやすくなります。また、この汚れが原因で結膜炎の症状がひどくなると、目の分泌物が増加します。その分泌物がコンタクトレンズに付着した際、十分な洗浄や蛋白除去が行われなければ、汚れはさらにレンズに蓄積し、結膜炎の症状を悪化させるという悪循環に陥ります。また、レンズに対してアレルギー反応を起こしている場合も考えられますので、目の充血、目やに、目のかゆみなど、結膜炎の症状が見られる場合には、コンタクトレンズの装用を中止し、眼科を受診するようにしましょう。使用し続ける事により、重症化する危険性があります。
コンタクトレンズ装用を快適に安全に継続するためにも、日々のケアは十分に行いましょう。それでも結膜炎になってしまう場合もありますので、それに備えて眼鏡も日頃から慣れておくようにしましょう。
まとめ
結膜炎と言っても原因はいろいろです。また、一見結膜炎かと思っても、実は違う病気である可能性もあります。目が赤い、目がかゆいなど、結膜炎かな?と思ったら、コンタクトレンズを外して、すぐに眼科を受診してください。
<参考資料>
1) 医療情報科学研究所 編:「病気がみえる vol.12 眼科」 第1版 メディックメディア, 2019
2) NHK出版:NHK きょうの健康 10月号 No.379:62-69, 2019
3) 大路 正人 他 編:「今日の眼疾患治療指針」 第4版 医学書院, 2022
4) 公益財団法人 日本眼科学会:目の病気 病名から調べる
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/
5) 公益財団法人 日本学校保健会 学校保健ポータルサイト:学校感染症による出席停止の基準
https://www.gakkohoken.jp/special/
6) 坪田 一男 他 編:「眼科プラクティス 27. 標準コンタクトレンズ診療」 第1版 文光堂, 2009
7) 植田 喜一:「コンタクトレンズの正しい使い方 ―効果的に/安全に/快適に─」 第1版 メディカル葵出版, 2002