コンタクトレンズの処方せんは必要?なしでも買える?知っておきたいリスクや処方せんのもらい方を解説!
作成日:2022/12/13 更新日:2024/11/13
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コンタクトレンズは指示書(処方せん)なしでも買える?買えない?
コンタクトレンズの処方せんとは
「処方せん」とは、本来、医師が医薬品を処方するために、薬の種類と量、投与方法などを記載した文書です。そのため、高度管理医療機器であるコンタクトレンズを購入するために、眼科医が発行する 「コンタクトレンズ指示書(指示書)」と医薬品の処方せんとは異なりますが、簡易的に、「コンタクトレンズ処方せん」あるいは単に、「処方せん」と呼ばれることもあります。
「コンタクトレンズの販売自主基準」2)では、購入者がコンタクトレンズを正しく、かつ、安全に使用できるように、販売業者に対して「眼科医の処方・指示に基づく販売」が推奨されています。
コンタクトレンズ指示書(処方せん)には、患者さんの名前や発行医療機関の情報のほか、「製品名」「製品の規格(ベースカーブ、度数、直径)」などが記載されており、具体的には以下のような内容が盛り込まれています。コンタクトレンズ指示書(処方せん)は、特定の製品の特定の規格と、基本的には一対一対応であるということになります。
コンタクトレンズ指示書(処方せん)の記載事項例2)
- 患者氏名
- 販売名(製品名)/メーカー名
- 規格(ベースカーブ、球面度数、直径、円柱度数、円柱軸、加入度数、その他)
- 数量(使い捨て、頻回交換、定期交換では箱数、1箱のレンズ枚数等)
- 装用方法(終日装用、連続装用)
- 発行日
- 有効期限(眼科医の指示による)
- 医療機関名、医師名、連絡先、捺印
- その他、特にコンタクトレンズの取扱いで指導すべき注意事項など
コンタクトレンズは指示書(処方せん)がなくても購入可能?
「コンタクトレンズの販売自主基準」2)では、次のような販売方法が推奨されています。
眼科医の処方・ 指示に基づく販売2)
- 眼科医療機関への受診確認後、電磁的記録媒体を含むコンタクトレンズ指示書(以下「指示書」という)が発行されている場合は、指示書に基づいて販売する。
- 眼科医療機関への受診確認後、眼科医療機関がコンタクトレンズの適応を認めた購入者に対して指示書が発行されていない場合は、指示書に代わるコンタクトレンズ情報を確認し販売する。
- 眼科医療機関を受診していない場合は、購入者に対してコンタクトレンズによる健康被害について情報提供を行い、受信勧奨を行う。
「処方箋不要」、「検査不要」等の眼科医療機関の受診が不要であると誤認させるような販売行為は不適切であること。
このように、コンタクトレンズを購入する際、販売業者への指示書の提出は義務付けられていません。しかし、ある調査によると、コンタクトレンズの装用によって眼障害を起こした人の中には、眼科を受診せず、コンタクトレンズを購入している人が数多く含まれていました3),4)。
この結果を受け、厚生労働省は、購入者が正しく安全にコンタクトレンズを使用できるよう、コンタクトレンズ販売業者に対し、「眼科医の処方・指示に基づく販売」を推奨しています3)。また、政府広報オンラインにおいて、コンタクトレンズによる目のトラブルに対する注意喚起をしています5)。
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指示書(処方せん)なしでコンタクトを購入するリスク
目の状態や見え方は、さまざまな要因で変化します。このため、コンタクトレンズは度数だけでなく、目の状態に合わせるためにも、眼科医による定期的な検査を受けることが大切です。しかしながら、自己判断による誤った選び方をして、眼科での受診を怠っていると、さまざまなトラブルが起きる可能性があります。
例えば、フィッティング(目の上でのコンタクトレンズの動き具合)が合っていないと不快感が生じたり、見え方が悪くなったりします。また、自己判断で安易に度数を強めたり弱めたりしていると、目が疲れてしまったり、見えにくくなったり、左右のバランスが悪くなる可能性があります。さらに、日常で起きることの多いトラブルの1つとして、角膜(くろ目)に小さな傷ができてしまうことがあります。傷自体は大したことがなくても、傷から細菌やアカントアメーバなどの病原体が侵入すると、角膜感染症に発展してしまう可能性があります。
指示書(処方せん)なしでコンタクトレンズを購入する人は、眼科を定期的に受診することもあまりないのではないかと考えられます。眼科医に目の状態をチェックしてもらう機会が少ないと、目のトラブルの発見が遅れてしまったり、目のトラブルを見逃したりすることになりかねません。
また、トラブルの程度によっては痛みや充血といった症状がない場合も多くあります。そんな場合でも、定期的に検査を受けていれば、ひどくなる前に治療を受けることができます。コンタクトレンズは、高度管理医療機器であるということを念頭に、コンタクトレンズを装用している方は、定期検査を忘れずに受けるようにしましょう。
指示書(処方せん)を発行する眼科医がチェックしていること
眼科医による検査では、目の健康状態に異常はないか、コンタクトレンズの適正装用はできているか、視力低下の裏に目の病気が隠れていないか、正しい度数やコンタクトレンズと目の相性はどうか、といった点をチェックしています。
「コンタクトレンズは、度数が同じであれば、どの製品を使っても同じだろう」と考えていませんか?コンタクトレンズは度数以外にも違いがあります。BC(ベースカーブ:コンタクトレンズの曲がり具合)、DIA(ダイアメーター:コンタクトレンズの直径)といった記号と数値でレンズデータが表現されており、これらが異なると装用時のフィット感や見え方に違いが生じることがあります。
さらに、BCとDIAが同じであっても、メーカーや製品によってレンズの素材やデザインが違うため、それらの違いによって装用時のフィット感が異なることもあります。そのため、安全に装用するには、目の状態に応じて眼科医の専門的な視点からコンタクトレンズを選択し、処方してもらうことが重要です。
また、目の度数はずっと同じとは限りません。前回購入時に眼科医の視力検査を受けていても、実は目の度数が変化していて、最適な度数ではなかったということもありますし、眼科医の検査を受けず、購入時に自己判断で度数を強めたり弱めたりすると、知らず知らずのうちに過矯正や低矯正になってしまい、目の疲れの原因になることもあります。さらに、目の状態によっては、2weekタイプ(2週間頻回交換)や1monthタイプ(1ヵ月定期交換)には適していないと判断される場合もあります。
このように、眼科医はさまざまな角度から、目の健康状態をチェックしています。コンタクトレンズを購入する際の検査や診察は、良い機会ですので、面倒くさがらず、ぜひ受診するようにしましょう。
指示書(処方せん)をもらった後の流れ
コンタクトレンズの購入方法
コンタクトレンズを購入できる場所は、主に、販売店、インターネット通販です。
販売店
眼科医の検査・診察を受けコンタクトレンズ指示書(処方せん)を入手したら、それに基づいてコンタクトレンズ販売店で製品を購入します。指示書(処方せん)には有効期間があるので、その期間内に購入しましょう。
医薬品の処方せんでは、使用期間は交付日を含めて4日以内ですが、コンタクトレンズは「高度管理医療機器」であり、医薬品ではないので、期間は眼科医の指示によります。有効期間を超えないように注意しましょう。
インターネット通販
コンタクトレンズはネット通販でも購入できます。コンタクトレンズ指示書(処方せん)に記載された製品や規格(度数・BC・DIAなど)をもとに購入します。対面販売でないのであれば、指示書(処方せん)なしでも大丈夫なのでは?と思う方もいるかもしれません。ところが、ネット通販での販売も実店舗と同様に、「眼科医の処方・指示に基づく販売」が推奨されています3)。インターネット通販での購入であっても、安全に装用するために眼科医の検査・処方が重要であることには変わりありません。
まとめ
コンタクトレンズ指示書(処方せん)なしで、自己判断でコンタクトレンズを購入した場合、矯正が不適正となり、見えにくさや疲れやすさを招いたり、不快感を生じたりするだけではなく、さまざまなトラブルを引き起こしかねません。また、眼科で定期検査を受けずに装用し続けると、初期には自覚症状のないトラブルを悪化させてしまったり、コンタクトレンズそのものの装用を中止せざるを得なかったりする状態に陥る可能性もあります。コンタクトレンズ購入前には必ず眼科を受診し、検査、診察、処方を受けた上で購入するようにしましょう。
<参考資料>
1) 公益財団法人 日本眼科学会:病名から調べる コンタクトレンズ障害
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=19
2) 一般社団法人 日本コンタクトレンズ協会:コンタクトレンズの販売自主基準
https://www.jcla.gr.jp/file/clhanbaijishukijun_kaitei_Q&A_20180514.pdf
3) 厚生労働省医薬・生活衛生局長通知 平成29年9月26日付 薬生発0926第5号
コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0926_1.pdf
4) 独立行政法人国民生活センター:コンタクトレンズによる目のトラブルにご注意ください -「医師からの事故情報受付窓口」からー
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20170803_2.pdf
5) 政府広報オンライン:コンタクトレンズによる目のトラブルにご注意を!
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201712/1.html