一般的には、医療用医薬品、OTC医薬品(市販薬)に関係なく、コンタクトレンズ装用時には、できればレンズを外して点眼するのが望ましいとされています。ただし、目薬の種類によってはコンタクトレンズを装用したまま点眼できる場合もあります。順に見ていきましょう。
ソフトコンタクトレンズ装用時に目薬は使用できる?使用時の注意点を解説
作成日:2024/11/13 更新日:2024/11/13
コンタクトレンズを装用したまま目薬は使用可能?
なぜ目薬の使用が問題になるのか
そもそも、コンタクトレンズ装用時の目薬の使用がなぜ、問題になるのでしょう。それは、多くの目薬には防腐剤が配合されているためです。
実は、目薬には有効成分以外に、さまざまな添加剤が配合されています。その1つが防腐剤と呼ばれるもので、使用中の微生物汚染を防止する目的で、多くの目薬で使用されています1)。目薬を開封しても1ヵ月程度使用できるのは、防腐剤の働きによるものです。目薬に使用されている主な防腐剤の成分として、ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)、クロロブタノール、クロルヘキシジングルコン酸塩1)~3)などがありますが、特に問題となるのがベンザルコニウム塩化物です4)。
例えば、春先の花粉症シーズンによく処方される抗アレルギー点眼薬の添付文書(適用上の注意)には、「本剤はベンザルコニウム塩化物を含有するため、含水性ソフトコンタクトレンズ装用時の点眼は避けること。」といった記載があります。このように、コンタクトレンズでは、目薬に配合されているベンザルコニウム塩化物などの防腐剤がレンズに吸着し、濃度が高まり、角膜との接触時間が長くなることで、角膜障害の原因になることがあります4),5)。また、目薬のpHや浸透圧などの液性との相性により、まれにコンタクトレンズ自体が変形する場合もあるようです4)。
目薬の防腐剤が問題になるのはソフトコンタクトレンズのみ?
では、目薬の防腐剤が問題になるのはソフトコンタクトレンズだけで、ハードコンタクトレンズでは関係ないのでしょうか?
実は、ハードコンタクトレンズでは、多くの場合、装用中にコンタクトレンズの上から点眼しても問題ないと考えられています5),6)。
点眼後どのくらい時間をあければコンタクトレンズを装用できる?
では、目薬をさした後、どれくらいの時間をあければ、コンタクトレンズを装用できるのでしょう。
まず、コンタクトレンズに吸着したり、悪影響を及ぼす防腐剤のような成分が配合されていない、人工涙液タイプの目薬の場合、コンタクトレンズを装用したまま点眼することができます。ただし、防腐剤が配合されていなくても、カラーコンタクトレンズには使用できない目薬もあるので注意しましょう。また、市販の目薬の中には、「ソフトコンタクトレンズ又はハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感」、「ハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感」など、どちらのタイプのレンズに使用できるか明記されている製品もあります。このような記載がある目薬については、添付文書に従い、コンタクトレンズを装用したまま点眼することができます。
ただし、市販の目薬を購入する場合には、薬剤師に相談したり、パッケージの記載に注意して、自分の使用しているコンタクトレンズで使用できる製品を購入するようにしましょう。
なお、医療用で処方される目薬の中には、ゲル化するタイプの目薬や粘性を高めて滞留性を向上させた目薬などがあります。このような目薬の場合には、点眼後、さらに装用までに時間をあける必要があります。眼科医の指示に従って点眼し、正しく装用するようにしましょう。
ソフトコンタクトレンズ装用時の目薬の使用と注意点
これまで述べた内容のほか、取扱い上の注意点を加え、ソフトコンタクトレンズ装用時における目薬の使用と注意点についてまとめます。患者さんが市販の目薬を薬局などで購入する場合に限定すると、下記のようになります。
- 人工涙液タイプの目薬はコンタクトレンズを装用したまま点眼できる。
- カラーコンタクトレンズでは、防腐剤の有無にかかわらず目薬が使用できない製品があるため。
- 目薬の添付文書やコンタクトレンズの添付文書を確認する。
- 添付文書に、ソフトコンタクトレンズに使用できるというできる記載がある製品は装用したまま点眼できる。
- 添付文書の用法・ 用量を守って点眼する。
- 市販の目薬を数日間使用しても症状の改善がみられない場合には、必ず眼科を受診する。
- 点眼前には手指を石けんでよく洗う。
- 目薬のボトルの先端がまぶたやまつげに触れないように点眼する
- 目薬のボトルの先端が不衛生にならないように注意してふたをする。
- 防腐剤の入っていない人工涙液タイプの目薬は、開封後、10日を過ぎたら廃棄する
5)~8)より作成
なお、目薬が必要な背景によっては、そもそもコンタクトレンズの装用自体が好ましくない場合もあるかもしれませんが、ここではあくまでも、コンタクトレンズの装用が可能な目の状態で、目薬を使用することを前提としています。
まとめ
ソフトコンタクトレンズ装用中に市販の目薬を使用する場合には、コンタクトレンズ装用中に使用できる防腐剤フリーの製品とし、添付文書に従って正しく使用するようにしましょう。市販の目薬については、使用できるコンタクトレンズの種類が明記されているものもあるので、自分の使用しているコンタクトレンズに合った点眼薬を使用するようにしましょう。
<参考資料>
1) 一般社団法人 日本眼科用剤協会:医療用点眼剤の製剤設計・ 製造https://gankayozai.jp/patient/manufacture.html
2) 一般財団法人 日本医薬情報センター(JAPIC) 編:「JAPIC 一般用医薬品集 2024」 JAPIC, 2023
3) 加藤 浩晃:「2022-2023年 眼科点眼薬Note ―ジェネリックがわかる! 市販薬もわかる!」 改訂5版 メディカ出版, 2022
4) 高村 悦子:あたらしい眼科 35(12):1651-1652, 2018
https://jnjvisionpro.jp/sites/jp/files/public/education-center/saranaruippo_201812.pdf
5) 石岡 みさき:「点眼薬の選び方」 第2版 日本医事新報, 2020
6) 植田 喜一:「コンタクトレンズの正しい使い方 ―効果的に/安全に/快適に―」 第一版 メディカル葵出版, 2002
7) 遠藤 泰:調剤と情報 20(10):1126-1130, 2016
8) 日本薬剤師会 編:「第14 改訂 調剤指針」 増補版 薬事日報, 2022