コンタクトレンズの原理を発見したのはレオナルド・ ダ・ ヴィンチ?
今から約500年前(1508年)、ルネッサンス期の天才発明家で、絵画「モナ・ リザ」の作者でもあるレオナルド・ ダ・ ヴィンチ(Leonardo da Vinci:1452-1519)は、球形のガラス容器の中に水を入れ、水面に顔を浸けて、どのような像が見えるか実験しました。一説には、これがコンタクトレンズの原理に符合するとされ、ダ・ ヴィンチは、コンタクトレンズの始祖といわれています。
作成日: 2022/12/13 更新日: 2024/11/13
今から約500年前(1508年)、ルネッサンス期の天才発明家で、絵画「モナ・ リザ」の作者でもあるレオナルド・ ダ・ ヴィンチ(Leonardo da Vinci:1452-1519)は、球形のガラス容器の中に水を入れ、水面に顔を浸けて、どのような像が見えるか実験しました。一説には、これがコンタクトレンズの原理に符合するとされ、ダ・ ヴィンチは、コンタクトレンズの始祖といわれています。
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その後、視力矯正を目的としたガラス製のレンズが作られたのは、ダ・ ヴィンチの時代から300年以上経った1888年です。チューリッヒの眼科学・ 生理学の講師で、眼科医でもあったアドルフ・ オーゲン・ フィック(Adolf Eugen Fick:1829-1901)が、近視であった自分自身の目にレンズを装用する実験を行ったのが最初とされています。このときに発表された論文名「Eine Kontactbrille」が、「コンタクトレンズ」の語源といわれています。
初期のコンタクトレンズはガラス製で硬く、大きくて分厚いものだったため、装用感を良くするためにさまざまな改良が加えられました。しかし、それでも目に痛みを生じたり、充血したりと、装用感が悪い時代が長く続きます。
その後、1938年に透明で破損しにくいアクリル樹脂PMMA(polymethyl methacrylate:ポリメチルメタクリレート)を使った初代のハードコンタクトレンズが登場し、一般に普及し始めました。さらに、1961年になると、水分を含んだ柔らかい素材を使用したソフトコンタクトレンズの製法が確立され、その後装用感が徐々に改良されていきました。
そして1987年に、アメリカで世界初の使い捨て※ コンタクトレンズ「アキュビューⓇ」が誕生し、1995年には、1dayタイプ(1日使い捨て※ )のコンタクトレンズが登場しました。そして、2010年には、酸素透過性に優れたシリコーンハイドロゲル素材の1dayタイプのコンタクトレンズが登場するなど、改良が重ねられています。
さらに、近視の矯正だけではなく、乱視や老視も矯正できるようになり、ソフトコンタクトレンズは今なお進化し続けています。
日本では、1916年以降、コンタクトレンズに関する報告がいくつかありますが、これらは全て海外で使用されていたガラス製レンズの紹介に関するものでした5)。
実際の使用例としては、1949年 名古屋大学の水谷豊博士が、円錐角膜の高校生のためにPMMA製のコンタクトレンズの作成に着手し、1951年に視力矯正の臨床実験に成功したのが始まりだといわれています5),6)。また、同年、角膜だけを覆うコンタクトレンズの開発に日本で初めて成功したのが田中恭一氏(株式会社メニコン創始者)です6)。
当時のコンタクトレンズは、装用感が悪く、安全に装用できる時間も短いなどの問題が多くありましたが、その後、レンズの酸素透過性や装用感が改善され、現代の快適なコンタクトレンズに進化していったのです。
日本において、ソフトコンタクトレンズの販売が認可されたのは1972年で、コンタクトレンズメーカー7社から一斉にソフトコンタクトレンズが発売されました。また、国内初の使い捨て※ コンタクトレンズ「アキュビューⓇ」が誕生したのは1991年、1dayタイプの「ワンデー アキュビューⓇ」が登場したのは1995年でした。
コンタクトレンズは、古くからその原理は発見されたものの、現在流通しているような装用感のよい製品に進化するまでには、大変な時間と労力を要したようです。現在では、さまざまな付加価値をもつコンタクトレンズも開発されており、今なお進化し続けています。
*:本記事では1日使い捨ての1dayタイプと2週間終日装用後に使い捨てる頻回交換の2weekタイプを「使い捨てコンタクトレンズ」として扱っています。
<参考文献>
1) 公益財団法人 日本眼科学会:病名から調べる コンタクトレンズ障害
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=19
2) 消費者庁:コンタクトレンズによる眼障害について-カラーでも必ず眼科を受診し、異常があればすぐに使用中止を-
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_054/
3) 公益財団法人 日本眼科学会:コンタクトレンズ診療ガイドライン(第2版)
https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/contact_lens2.pdf
4) 大橋 裕一:「専門医のための眼科診療クオリファイ 6 コンタクトレンズ自由自在」 初版 中山書店, 2011
5) 水谷 由紀夫 他:コンタクトレンズ博物誌 その5 49(2), 135-137, 2007
6) ニッポン放送 NEWS ONLINE:日本のコンタクトレンズの始まり 水谷 豊氏と田中 恭一氏の功績