スポーツ時のコンタクトレンズ装用について 注意点や選び方のポイント解説
作成日:2024/11/13 更新日:2024/11/13
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スポーツ時にコンタクトレンズを装用するメリット2)〜4)
競技や種目によって動作や強度は大きく異なりますが、スポーツ時には日常生活時より、大きく体を動かすものがほとんどです。中には相手と激しくぶつかったり、飛び跳ねたりするスポーツもありますが、眼鏡と異なり、コンタクトレンズは目の上に直接のせて使用するため、より目にフィットし、見え方や動作へのストレスが少なくなると考えられています。
スポーツ時にコンタクトレンズを装用するメリットには、大きく次の3つがあります。
広い視野とクリアな見え方が得られる
コンタクトレンズと眼鏡では、視界の広さや見え方が異なります。眼鏡では目とレンズの間に平均12mmのアキ(目の表面から眼鏡の内側までの距離)があり、眼鏡フレームによって視界に限界がありますが、コンタクトレンズは角膜(くろ目)に直接のせるため、裸眼時と同様の広い視野で自然な見え方が得られます。
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激しい動きでも外れにくい
コンタクトレンズは目の上にぴったりくっついています。特に、ソフトコンタクトレンズは走ったり、飛び跳ねたりしても外れにくく、相手と激しくぶつかってもフレームで相手を傷つけたり、自分の目や顔にけがをしたりしにくいと考えられます。
レンズが曇らない
角膜に直接のせて使用するコンタクトレンズは、スポーツ中の汗や息でレンズが曇る恐れが少ないため、クリアな視界で競技に集中したい方におすすめです。
コンタクトレンズ装用の有無による各競技への影響
それでは、コンタクトレンズ装用の有無により、各競技別にどのような影響がみられるでしょう。2004年と2014年に実施されたアンケート調査の結果5),6)を参考に、各競技別の事例をご紹介します。
視力矯正の有無による各競技での事例変化5),6)
種目 | 矯正前(視力不足によるミスの事例) | 矯正後(視力矯正による改善の事例) |
---|---|---|
バスケットボール | 相手やゴールとの距離感がつかめずシュートが入らない 掲示される残り時間やボールがよく見えない 相手選手がよく見えない | 距離感が向上しシュート率が向上する 周りがよく見え、精神的にも集中できる 相手選手の動きやゴールがよく見える |
野球 | 捕手や味方のサインを見間違える 高く上がったフライを見失いキャッチできない 飛んできたボールが複数個に見えてキャッチできない | 捕手や味方のサインがよく見える フライへの捕球への入り方、遠近感が改善する 打者や走者の動きがよく見え瞬時の判断が良くなる |
サッカー | マークしている相手選手を見失う 相手と味方を間違えてパスをする 距離感、遠近感がとれずボールを奪われる | 逆サイドの選手の動きやボールがよく見える 選手の顔や動きがよく見えパスコースの選択肢が増える 相手との距離感や周りの動きがよく見えトラップしやすい |
バレーボール | 上がったトスの高さや距離感が分かりにくい サインを見間違える 飛んでくるボールがよく見えない | 距離感がつかめスパイクしやすい サインがしっかり見える ボールがよく見えミートやレシーブしやすい |
テニス | 速いボールの動きが目で追えない ボールの回転が見えない ボールやラインがぼやけて距離感がつかめない | 速いボールでも反応できる ボールの回転がはっきり見える ボールやラインがはっきり見え落下点を推測して動ける |
バトミントン | シャトルがよく見えず振り遅れてミスをする ラケットがシャトルに当たらない 空振りして相手の得点になる | シャトルの動きや奥のラインがよく見える シャトルに視点が合いプレイに集中できる スマッシュのレシーブがしやすい |
陸上 | ハードルまでの距離感がつかめない バトンやタスキの受け渡しを失敗する 石などの障害物が見えず転倒しかける | ハードルまでの距離感が改善しタイムが上がる 距離感覚が向上する 恐怖心がなくなる |
5),6)より改変
スポーツ時のコンタクトレンズ装用での注意点2)〜4)
コンタクトレンズはスポーツ時に便利ですが、使い方を誤ると目のトラブルを引き起こしてしまいます。特に、スポーツ時のコンタクトレンズ装用では、次の点に注意しましょう。
使用後はしっかりレンズケアする
1dayタイプ(1日使い捨て)以外のコンタクトレンズでは、使用後に十分なレンズケアが必要です。競技の種類によっては、汗などの汚れがレンズに付着している可能性があります。汚れたままのレンズを使用していると、目が傷ついたり、アレルギーや感染症を引き起こしたりするかもしれません。スポーツ後には手をきれいに洗い、お使いのコンタクトレンズに合った方法で、しっかりとレンズケアしましょう。
水中のスポーツでは装用を控える
水泳や水球など、水中で行うスポーツでは、コンタクトレンズの装用を控えましょう。プールの水には消毒剤の成分や微生物が含まれているので、眼障害や感染症などさまざまなリスクが考えられます。特に、水中には重度角膜感染症を引き起こす緑膿菌やアカントアメーバなどの環境菌も存在しているので注意が必要です。また、水が目に入ってコンタクトレンズに付着すると、レンズが変形する可能性もあります。水中の競技では、ルールが許せば、度付きのゴーグルで代用しましょう3)。
外れてしまったら新しいレンズに取り換える
外れにくいとされているソフトコンタクトレンズでも、激しい運動で外れる危険性が全くないわけではありません。もしも外れてしまったら、雑菌が付着したり、破損していたりする可能性があるので、新しいレンズに取り換えましょう。万が一、外れてしまった場合に備え、予備のレンズを持ち歩くことをおすすめします。そういう意味で、使い捨てできる1dayタイプのコンタクトレンズが便利かもしれません。
コンタクトレンズを使うときは眼科を受診する
コンタクトレンズを初めて使う場合には、装用練習も受けられますし、コンタクトレンズの正しい取り扱い方法や注意点を教わることもできます。コンタクトレンズ装用に適しているかどうか、自己判断せず、必ず眼科を受診しましょう。
スポーツ時に限らず、コンタクトレンズをお使いの方は、必ず眼科を受診しましょう。コンタクトレンズが使用可能かどうかといった目の健康状態、レンズの度数や種類(近視、遠視、乱視)、フィッティングなどを、問診や検査、診察で確認する必要があります。
スポーツ時に使うコンタクトレンズの選び方2)〜4)
コンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズの2種類に分けられます。また、ソフトコンタクトレンズは使用期間の違いによって1日使い捨ての1dayタイプと、2週間など決められた期間内で使用する頻回・定期交換タイプに分けられます。このうち、スポーツ時に使うコンタクトレンズの選び方としては、次のようなポイントがあります。
外れにくいソフトコンタクトレンズを選ぶ3)
ハードコンタクトレンズは角膜より小さくて硬く、耐久性に優れている反面、激しい体の動きや目の動きを伴うスポーツでは、ずれやすく、外れてしまう可能性があります。一方のソフトコンタクトレンズは直径が大きく、薄くて柔らかいので装用感が良く、角膜にピタッとフィットし、ずれたり外れたりしにくい特徴があります。そのため、ずれたり外れたりしにくく、たとえずれても、ハードコンタクトレンズのように、痛みを伴うことはほとんどありません。
スポーツ時と日常使用時で異なる最大のポイントは、スポーツをする時は、激しい体の動きや目の動きを伴う点です。この観点では、ソフトコンタクトレンズがより適しているといえるでしょう。
清潔に使える1dayタイプを選ぶ
ソフトコンタクトレンズには、使用期間の違いにより、1dayタイプ、2weekタイプ(2週間頻回交換)、1monthタイプ(1ヵ月定期交換)があります。1dayタイプは一度外すと再使用できない使い捨てタイプのレンズで、毎回新しいものに交換するため、常に清潔な状態で使えます。一方、2weekタイプや1monthタイプでは、毎日十分なケアを行い、レンズを清潔に保つことが必要です。
スポーツをすると、コンタクトレンズに汗などの汚れが付きやすくなります。こうした汚れをレンズケアで取り切れない場合には、目のトラブルを引き起こしてしまうこともあるので、普段1dayタイプを使っていない人も、スポーツ時は1dayタイプにしてみるのも良いかもしれません。
まとめ
現在はスポーツの競技種目が多岐にわたる上、個々の競技者のニーズや目の状態も多種多様のため、スポーツ時におけるコンタクトレンズ処方の画一的なマニュアルはありません。大切なことは、いかにコンタクトレンズ装用に伴うリスクを最小限に抑え、パフォーマンスを最大限に引き出すことができるかです。そのため、スポーツ時にどのようなコンタクトレンズを使用するのが良いかについては一概には言えませんが、競技の特性や競技中の環境条件などをもとに、眼科で相談すると良いでしょう。
<参考資料>
1) 枝川 宏:日コレ誌 61(3):72-76, 2019
2) 前田 直之 他 編:「新篇眼科プラクティス 9 必読! コンタクトレンズ診療」 第1版 文光堂, 2023
3) 坪田 一男 他 編:「眼科プラクティス 27.標準コンタクトレンズ診療」 第1版 文光堂, 2009
4) 植田 喜一 編:「眼科スタッフのためのCL(コンタクトレンズ)で困ったときに開く本」 第1版 廣済堂, 2009
5) 石垣 尚男 他:愛知工業大学研究報告 第39号B:121-129, 2004
6) 石垣 尚男 他:愛知工業大学研究報告 第49号:129-137, 2014